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木下 和夫 著
「税制調査会−戦後税制改正の軌跡−」

(株式会社税務経理協会 平成4年11月刊)


 本書は、約4分の1世紀にわたって著者が参加された税制調査会の答申の内容について、月刊誌「税経通信」にlか年にわたって連載された論述に、新たに脚注を加え、対談、解説、年表などを合わせて600頁近い大作として出版されたものである。通常この種の著作には、調査会の答申のとりまとめの資料的意味に留まるものが多いのであるが、本書は著者の意見が随時、述べられており、著者の理論の総まとめという意味も持っている。

 第1章でシャウプ勧告以来の経済発展に対応した税制のあり方についての審議をまとめた昭和39年12月の長期答申がとりあげられ、当時は個別消費税の方がよいとしていたことなどが述べられている。しかし、40年代に入ると財政硬直化という状況のなかで付加価値税の検討が進められてくることが、第2章以降で明らかにされる。

 第3章は著者が付加価値税の調査のため欧米に出張された結果がまとめられており、フランスでは所得税よりも消費税など間接税の方が公平と考えられていることなどから、理論的にいかにすぐれた課税であっても現実に機能しなければ決して推奨されないとの所感が述べられている。第4章から第7章までは政府税制調査会における一般消費税の審議の経過と内容が詳しく述べられ、第8章と第9章では増税なき財政再建のための、いわゆる選択的増税の状況が明らかにされ、第11章、第12章で抜本的税制改正の動きと消費税の採用に至までの経緯と内容が述べられている。

 以上のように、昭和40年代からの税制の変遷とその論議を客観的に記述したものとして、歴史的意味をもつ文献であるが、同時に著者の理論に基づく主張が至るところに述べられており、著者の理論の総まとめという性格も持っている。

 例えば、法人税の基本的性格については、法人実在説とか法人擬制説とかの議論について、問題は法人自体に固有の担税力を認めるか否かにあるとして、その担税能力を認めないという立場から絶対的法人税を支持する論拠を否定しておられる(10頁)。交際費課税については「交際費支出のチェックを税制が負うということが、わが国の自由企業制度のもとで望ましいのかどうか、また支払配当金を上回る交際費支出をどのように理解すべきか」(246頁)など問題提起をされている。さらに所得税について税負担の垂直的公平について、最近の英米では「勤労所得を中心として、所得税で所得や富の不平等を是正するという発想は弱くなって」いるとして、所得税制の再検討が必要であることなどが述べられている。

 以上のとおり、本書は著者の新しい理論が展開されているという種類の著作ではないが、高い水準の税制に関する文献として、極めて優れた著作であると認められる。

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