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岸田 貞夫 著
「現代税法解釈−手続法・実体法・争訟法における課題と考察−」

(株式会社ぎょうせい 平成4年10月刊)


 本書は、全部が五編から構成されている。第一編では、著者の税法解釈の基本的態度を明らかにしている。それは税法の解釈の役割が法的安定性に資することにあるから、そのために一定した解釈基準に基づくことが必要であるとし、一般的には規定の文言に形式的に適用し、場合により文言を離れ公平論・実質論に基づき課税を肯定することは租税法定主義に抵触するとし、解釈基準をもって、課税の公平と納得されうる解釈に置く。そのためにも形式的に法規を解釈することが租税法規の中に在る公平の実現に資するとして、実質的公平に基づく解釈は、租税法律主義には反する旨強調する。而して、租税法の解釈につき、規定の文言を超える実質的解釈は、解釈の範囲を超え、新たな立法を行うことになると反対する。かかる視点に立ち具体的展開に入り、第二編では私法上の借用概念、信義則(禁反言)の基本概念を説明する。第三編では、手続法の問題として、錯誤による申告、更正の請求、青色申告の更正理由付記等に関する問題の解釈方法を論ずる。第四編では、実体法の問題として、重加算税と故意、更正の予知と修正申告、隠ぺい仮装の問題、重加算税、無償取引の収益性、繰越欠損、確定決算、同族会社の行為計算の否認、営業権、推計課税等を取り上げている。第五編では、争訟権の問題として、請求の利益、審理の範囲、閲覧請求制度等、争訟事件で問題となる点を解明している。

 本書の全般をみると、明らかに法規の文言性、形式性を重視して、租税法律主羲を解釈論全般にわたって貫徹しようとする著者の意図が随所にみられ、体系的にも成功している。現実の課税実務が強調する課税の公平の解釈では規定の文言を離れ実質的、類推的に公平を実現しようとし、税法の技術性という理由でつじつまを合わせていることに本書は強く反対し、租税法律主義の原点に戻って法としての租税法のあり方を論述している。これに基づき本書の各論的諸問題につき、いずれも租税法律主義を貫こうとする解釈方法論が示され、その結果、納税者が納得して租税を支払い、法的安定性にも資するとされる。

 本書は、税法を法律学の視点からとらえて法解釈はいかにあるべきかを明らかにしたものとして、税法学の優れた研究として高く評価でき、学界のみならず実務にも裨益するものである。

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