公益財団法人租税資料館

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西野 敞雄 著
「税ってなんだろう」

(大蔵省印刷局 平成4年11月刊)


 税に関する書籍は(イ)極めて専門的なもの、(口)ハウ・ツウもの、(ハ)法律解説書が多いが、本書は、税について歴史をふまえて平易に解説し、さらに深く考えるためのヒントを読者に与えるような教材や副読本とすることを意図して執筆されている。(1)租税の実際(21項目)、(2)租税の理論(5項目)、(3)租税の歴史(8項目)、(4)外国の租税制度(3項目)から構成されている。

1 租税の実際
 国税、地方税から関税、租税条約、国際租税に至るまで税制の主要なテーマがほぼすべて取り上げられている。
 国税では、分類課税と総合課税の思想が交錯する所得税の変遷、各種の所得控除の説明と問題点、配偶者の扱いを含む課税単位の問題、法人税と所得税の統合についての考え方とその方式、資産課税の長所と短所、フランスで付加価値税が誕生するまでの消費課税の歴史に絡ませた消費税の解説など、歴史、理論、各国の税制との比較を織り混ぜて税の実際を分かりやすく述べている。  また、地方税については、地方税の主要な税目を解説しつつ、国と地方の財源の配分問題、国税の付加税化をめぐる議論、法定外普通税のあり方についても記述している。さらに、これは本書の特色といえようが、国税の現場での著者の経験を生かして、青色申告、マルサ、納税貯蓄組合、国税不服審判所など税務行政の実際についても、その発展の歴史をたどりつつその機能、現状、今後進むべき方向について解説している。

2 租税の理論
 負の所得税、税体系論(所得課税か支出税か)、課税の根拠(利益説か能力説か)、ハイエクの租税論、租税原則の現代的意義などが説明されている。
 ここでは筆者の見解が各所で披露されている。例えば税体系論では、支出税は消費支出の把握の難しさから実施困難と退け、また、最適課税論については分類所得税の復活につながると批判し、包括所得税を中軸として、社用消費やフリンジ・ベネフィットの増加に対応するためにもすべての消費に対する課税で補完すべきであるとしている。
 ハイエクの租税論では、累進課税は多数決原理の横暴であるとする自由主義経済学者ハイエクの経済観を紹介し、全体としての累進性は必要としても、わが国では、個々の税の累進性にこだわりすぎてきたのではないかと疑問を投げかける。また、租税原則については、アダム・スミス、ワグナー、マスグレイブの租税原則の歴史的な背景を重視し、租税原則がどうあるべきかはその時の社会経済の歴史的状況をふまえて議論すべきこと、また、公平の原則こそが租税原則の生命であることを強調する。いずれも実務家としての現実的な意見である。

 一般に租税論の書物は難解、退屈であるが、本書は税の理論と実際をきわめて平易に説明し、歴史的な背景や外国の事情をふんだんに紹介し読者の興味を引きつけるユニークな租税論の書物である。また、記述は正確であり、平易な記述であっても語られている内容そのものの水準はかなり高い。税について考えるヒントを与える副読本としたいとする著者の意図は十分に果たされており、特に今後の租税教育に貢献するものと考える。

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