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中村 忠・成松 洋一 著
「企業会計と法人税」

(株式会社税務経理協会 平成4年5月刊)


 法人税法における課税所得の概念と計算原理は、財務会計における利益概念と計算原理をベースとし、これに課税目的上の規制または調整を施して形成されている。公正会計処理基準に従う収益・費用の計算規定、減価償却・引当金等に関する個別の経理要件規定,確定決算に基づく確定申告手続規定などは、このような内容を持つ課税所得概念と計算原理の法的実現の過程である。したがって、これらの所得計算規定の解釈においては、財務会計原理がいかなる課税原理に基づいて確認、修正、限定され、税法制度として導入されるのかを考えることが重要な課題になる。

 この書は、このような意味で、財務会計原理と課税所得計算原理を結びつけて法人税法を解説しようとするものである。財務会計原理については中村氏、法人税原理については成松氏が、それぞれ分担して執筆された共著であり、第1編「企業利益と課税所得」 と第2編「法人税の計算構造」から構成されている。

 第1編のうち、第1章「企業利益とその計算原理」、第2章「収益会計」、第3章「費用会計」、第4章「資本会計」までが中村氏の執筆部分であり、特に会計原則論を核として、税法に関連する側面の財務会計原理が体系的、かつ、簡潔に説かれている。第5章「課税所得とその計算原理」、第6章「確定決算基準」、第7章「益金に関する税務」、第8章「損金に関する税務」、第9章「資本に関する税務」が成松氏の執筆部分であり、中村氏の記述に対応して課税所得計算の基本原理、すなわち、法人税法の所得概念、確定決算と申告との関係、益金・損金の基本概念とその認識基準、資本概念等に関して、主要な判例、学説等を引用しながら、実定法の文理解釈と経済概念・会計概念との理論的関連が述べられている。

 第2編は、第10章「収益に関する処理」、第11章「費用に関する処理」、第12章「資本に関する処理」から成る。いずれも成松氏の執筆部分であり、所得計算に関する「別段の定め」としての個別規定が、主要な通達、判決等も含めて体系的に述べられている。

 本書は、伝統的な法人税法解説書の型を超えて、会計原理との接点に重点をおいた体系的な法人税解説書として、独自の構成を意図したと考えられる著書であり、著者の意欲は高く評価することができる。その内容も、会計原理と税法原理の関係に関する記述の調和が工夫され、かつ、記述も明快である。特に、税務実務に携わる職業会計人、行政担当官、、法人税法の学習を志す学生等に対する格好の参考書としての役割を果たし、税法研究の水準を向上させることが充分に期待される好著であるということができる。

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