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松澤 智 編著
「租税実体法の解釈と適用」

(株式会社中央経済社 平成5年8月刊)


 本書は、国税不服審判所の裁決事例について、編著者が主宰されている裁決事例研究会での研究成果を体系的に整理し、補筆訂正された研究書である。課税所得の解釈について、従前は専ら会計学、財政学的見地から考察する「経済的基準」により解釈されてきたところであり、無償譲渡に係る収益という税法独自の扱いについては同族会社の行為計算否認規定に依拠するというような解釈がなされていた。しかし編著者はこのような古い解釈基準を捨てて、税法という法律に規定されている法的概念、具体的には法22条に規定する所得の解釈によるべきであるという「法的基準」説をとっている。これは旧書「租税実体法」(昭和51年2月初版)以来説かれているところであるが、本書においても一貫してその所説が展開されている。

 本書の構成は税法解釈の基本的態度を論じた序に続き、法律学に基づく法的基準説に依るべきことを説いた第一篇・租税実体法の解釈と適用、およびその「『法律学』の視点からの裁決事例の考察」である第二篇とから成り立っている。第二篇は法的所得概念に関する第一部総論と、経済的観察方法と法的観察方法を検討する第二部各論とより成り、各章はまずその章における問題点を明らかにし、結果の妥当性が論じられる「争点・問題点」を簡潔にまとめ、あとは事案の概況、裁決要旨および研究より成っている。各章で採り上げられている項目は、第一部では、課税所得の本質、法人税法22条2項の意義、益金・損金の本質、所得概念、収益計上時期、宗教法人の収益事業であり、第二部では経済的利益、租税回避行為(1)(2)、借地権(1)(2)、使用借権、営業権、認定賞与、役員報酬、寄付金の本質、交際費・販売促進費、使途不明金、減価償却である。

 本書の特徴は、これ迄ほとんどなされなかった裁決事例の法的視点からの検討という点にあると思われる。行政機関における最終的な不服救済機関としての国税不服審判所の重要性はいかに強調しても強調しきれないところであるが、その割に法的訓練をえた人材が充分であるともいえないし、また審判所において納税者の代理人となることの多い税理士にも法的構成と主張をする能力に充分であるともいい難い。こうした現状において、裁決事例について法的視点から具体例に即して検討し直すことは、極めて大きな意味をもっており、税の不服審査の関係者だけでなく、税法研究者、税理士等も含めて広い人々に強いインパクトを与えるものと思われる。裁決事例について法的視点からの検討を行った最初の著書である。

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