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品川 芳宣 著
「法人税の判例」(現代税務全集37)

(株式会社ぎょうせい 平成6年2月刊)


 本書は、「法人税の裁判例……を重要項目別にほぼ網羅的に整理し、それぞれの項目の解釈適用の中でどのような影響を及ぼしどのような地位を占めているかを明らかにする」ことを意図し、「単なる判例集ではなく、裁判例の事実関係に則して法人税法の解釈適用との関係を明らかにする」ことを試みたものである。記述内容は、昭和62年以来『速報税理』に連載された記事を集大成したものである。

 内容は2部に分けられ、第1部「益金」は、第1章「益金の範囲」、第2章「収益の計上時期」、第3章「益金の計算」に区分される。第2部「損金」は、第1章「損金の範囲」、第2章「損金の計上時期」、第3章「役員報酬・賞与・退職給与」、第4章「寄付金」、第5章「交際費」に区分される。法人の営業損益取引に関して一般的に発生する項目に焦点を当てて整理されている。  記述は、各項目ごとに、法令および関連通達の骨子とその解釈上の論点を簡潔に整理した後で、関連する判例を紹介する。判例については、事実関係と争点を要約し、これに対応させて判決の要旨を記述する形式によっている。

 およそ、法律解釈の研究においては判例が重要な資料となることはいうまでもない。しかし、税法に関する判決は膨大な量にのぼっており、少数の専門研究者を除いては、判例の全部にわたって体系的に分析整理することは極めて困難な作業になってくる。一方、判決要旨集と名づけて市販されているものには、判決の要旨とされる箇所を断片的に収録したものが多く、事実関係との関連、争点、下級審と上級審の論旨の差異などまで理解できるように編集されたものは見当たらなかったのが現状である。その意味で、本書は類書の従来の記述の域を超えた内容が体系的に盛り込まれたものということができる。

 著者は、国税庁において法人税の訴訟審理事務にも携われた専門家であり、著書の全体の構成、収録判決の選択等については、総体としてバランスのとれた内容を備えている。たとえば、無償融資に関する利息認定について、課税を違法とした下級審判決(大津地裁・昭和47.12.13)と課税を相当とする控訴審判決(大阪高裁・昭和53.3.30)について、双方の論点の差異を簡潔に指摘し、裁判所の思考の振幅についても一通りの学習が得られるように配慮されているのがその例である。

 本書は、法人税に関する主要判決をほとんど網羅的に収録し、充実した内容になっている。事実関係および判示の要約も的確である。しかし、判決に対する評釈の紹介、著者の見解は明示されていない。その意味では、研究書としての性格は些か希薄になるともいえるが、その反面、研究資料としての客観性は確保されている。
このような性格を持つ本書は、法人税法の専門研究を志す学生、法人税行政または業務に関わる実務家、税法研究者等に対する有益な参考図書として役立つものと考えられる。

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