公益財団法人租税資料館

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中里 実 著
「国際取引と課税−課税権の配分と国際的租税回避−」

(株式会社有斐閣 平成6年2月刊)


 本書は、国際課税の問題を議論する際に経済学的思考が不可欠となりつつあるという認識のもとに書かれた論文集である。第一編は課税原則と国際的二重課税排除措置の両面について検討を加えている。第1章 フランスにおける国際的二重課税排除措置と第2章 ドイツにおけるに国際的二重課税排除措置は、おもに内国法人課税における課税権の分配について、フランスとドイツにおける国際課税における課税原則と国際的二重課税排除方式を紹介・検討したものである。微に入り細に入り諸規定が紹介されている。第二編は国際課税における源泉徴収を取り上げ、第1章 特許権使用料の源泉地と第2章 国際通信・放送と課税 ーー 著作権使用料の源泉地は、外国法人課税における源泉徴収について、使用料の所得源泉地を素材として論じている。第1章では、特許法の解釈が租税法の解釈に多大な制約を及ぼすとし、従来の通説判例を批判する。ポレミシュな作品であることは、周知の通りであろう。第2章は、著作隣接権の視点から、ローマ条約加入以降における国際通信をめぐる課税問題を扱う。わが国ではこれはパイオニア的作業である。第三編は国際的租税回避を取り上げている。第1章Tax Havenの利用形態において、タックス・ヘイブンを利用する企業により産業国家の課税権がいかにして浸食されるかを論じる。キャプティブのアメリカ連邦所得税法上の取扱いが詳細に紹介されている。第2章アメリカのトランスファー・プライスイング税制におけるarms' length priceは、1986年以降のアメリカ移転価格をめぐる議論を経済学の手法を用いてフォローし検討したものである。そこでの議論の理解には、若干の経済学及び企業金融の学識を必要とする。第3章 移転価格の基礎理論 ーー 独立当事者間価格決定のメカニズムは、移転価格に関する理論的検討を行っている。

 以上から判明するように、本書は国際租税法の重要な課題に意欲的に取り組んだ労作であり、読者は本書により国際租税の諸問題を理解しうる。しかしながら、法律解釈が部分的に二国間条約及び対外取引税法に試みられているとしても、なお一層の深化が望まれる。第一編及び第二編にみる議論でさえそうである。これは時間をかけてでも補充してゆく以外にないであろう。
本書は、わが国の租税法学の文化の向上に寄与し、租税実務にも著しく貢献するであろう。

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