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平野 嘉秋 稿
「パートナーシップ税制の法的構造に関する一考察−日米比較を中心として−」

(税務大学校論叢第23号 平成5年5月刊)


 本論文は一章から七章までに構成されており、詳細を極める。第一章序論において、米国パートナーシップ税制の法的構造について考察を試み、パートナーシップのみならず、「我が国の税法上具体的規定を欠いている民法上の組合及び匿名組合に関する税務上の問題点の解決に資することを目的」とすると問題を提起する。第二章パートナーシップの沿革と実態は、会社法上のパートナーシップの構成要素についての解説から出発して、米国国内租税法及び国際租税法における関係概念を手堅く紹介している。第三章パートナーシップの租税法上の概念では、パートナーシップの課税構造がそれ自体として詳細に叙述されている。第四章パートナーシップの課税構造は、米国その他諸外国のパートナーシップの課税構造を述べている。第五章パートナーシップ税制の国際的側面では、たいへん興味深くパートナーシップ税制の国際的側面が論じられており、益するところが大きい。第六章日本における類似組織の概念及び課税構造との比較において、我が国の民法上の組合、匿名組合及び人格のない社団等の課税構造が取り扱われた後、パートナーシップに本邦法人が参加した場合の我が国における税務上の取扱い及び我が国民法上の組合に非居住者が参加した場合の税務上の取扱いについて、きわめて貴重な考察がみられる。通達を基礎にしているとはいえ、いくつかの実務上の重要問題を明らかにし改善すべき論点をも指摘している。

 以上から判明するように、米国パートナーシップへの参加をめぐる租税問題及び我が国の匿名組合等にかかる租税問題は、本論文によって相当に解明されえたものと、高く評価しうる。しかしながら、近年の沿革から明らかなように、米国におけるパートナーシップはドイツの人的会社に近似するよう展開されてきている。このため、我が国の商法学者は、従来の訳語に代え、合名会社及び合資会社と訳するに至っている。リミテッド・パートナーは有限社員と、ジェネラル・パートナーは無限責任社員と、個人的責任(personalli-ability)は人的責任と適切に邦訳されていれば、日本の人的会社と米国のそれとを効果的かつ詳細に比較しえたであろう。さらに、条約法上、米国の人的会社(合名会社及び合資会社)並びに民法上の組合及び匿名組合が日本においていかなる法的性格を有する形態と解釈されるべきであるか、逆に日本の人的会社が米国においていかなる法的性格を有する形態と取り扱われうるかは、二国間租税条約を経由して適用地国法の解釈に依存する問題である。

 本論文は、若干の問題点もないわけではないとしても、我が国の租税法学の文化を向上させ、租税実務にも著しく貢献すると思われる。
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