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清永 敬次 著
「租税回避の研究」

(株式会社ミネルヴァ書房 平成7年3月刊)


 本書は、わが国における税法学上の主要な理論上の問題である租税回避のテーマにつき、著者による長年の研究の集大成である。著者は、これまで議論されている租税回避をめぐる諸問題、特に、経済的観察方法、同族会社の行為計算否認規定の本質、隠れた利益処分の意義、実質主義と租税回避との関係等の従来発表した研究論文を補正して、体系的にまとめられたものである。

 第一編では、ドイツの租税回避否認規定をめぐる諸問題として、ドイツ租税基本法5条の成立からドイツ租税調整法6条への変遷の跡を追及し、経済的観察方法の意義、法律回避と租税回避の差異にふれ、隠れた利益処分と租税回避との区別につき、実在説と擬制説の対立を紹介する。

 第二編では、租税回避否認規定に関するBFH等の判例を紹介し、租税回避否認規定の適用例、BFHに関する最近の判例、基地会社とAO42条をめぐる連邦財政裁判所の判例を展開し、タックス・ヘイブン対策に論及している。

 第三編では、わが国の租税回避につき、これまでの諸学説、判例に関する理論研究の集大成がみられる。その第一章では、「税法における同族会社の行為計算の否認規定」と題して、わが国の租税回避としての同族会社の行為計算否認規定の大正年間の立法の沿革を明らかにしている。第二章は、「実質主義と租税回避」を挙げ、実質主義の意義をめぐる諸説の論拠を明らかにして租税回避との理論的差異を解明している。第三章では、「同族会社の行為計算の否認と裁判例」と題して、否認規定に関する裁判例を紹介し、裁判例にみられる問題点、否認規定の基本的性格を論じたうえ、否認規定の要件の明確性を説いている。第四章では「同族会社の課税問題」として、古来から論ぜられている同族会社の行為計算の否認規定に関する違憲論、同族会社の否認規定が確認的規定か、それとも創設的規定かの論争につき、租税法律主義の建前から明文の規定が必要であるとして創設的規定を妥当とする。次に、タックス・ヘイブン対策税制に関連して、実質所得者課税の原則を定める法人税法11条説に対し、著者は有効に成立している法人格をこの規定によって税法上無視することができるとは考えていないと説き、法人税法11条が租税回避防止の規定であることを否定する。その他、法人税法22条2項と132条の関係につき、同族会社の行為計算の否認規定は他の課税要件規定の補充規定の考えに賛意を表している。最後に、立法論として、同族会社の行為計算の否認規定の今日的意義として寧ろ、同条を廃止し、個別的に対処規定を設けるべきであることを提唱している。

 本書は、ドイツ及び我が国の租税回避の沿革、学説及び判例を詳細に検討したものであり、基礎理論に関するほとんどを解明した本格的な研究書である。今後、この方面を研究しようと志ざす研究者にとっては、大変役立つ好適書であることは勿論、税実務家にとっても業務遂行に当たって誠に有益な書として評価できる。全体的にみて、租税回避に関連する内外の諸制度、学説、判例の現代までの展開をふまえて体系的にもまとまっている。

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