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イギリス信託・税制研究会 編/新井 誠・占部 裕典・渡邉 幸則(代表)
「イギリス信託・税制研究序説」

(株式会社清文社 平成6年4月刊)


 本書は、我が国の信託(目的)の多様化の必要性を念頭において、イギリス信託法及び信託税制から示唆を得ようとするもので、5章から構成されている。

 第1章(新井誠執筆)は、イギリス信託法の基本的法律関係、特に明示信託(制定法上の信託、公益信託、私益家族信託、私益目的信託等)を概観し、イギリス信託目的の多様性を指摘し、日本と比較した場合のイギリス信託の特徴、我が国の解釈論、立法論への示唆を試みる。そのうえで、利益家族信託の基本タイプである受動信託、収益保有信託(財産保護信託を含む。)、裁量信託、累積扶養信託(裁量信託の一種)に着目し、裁量信託のもつ受託者裁量機能、収益保有信託のもつ受益者連続的機能等の活用、高齢化社会にむけての財産保護信託の導入等が、日本でも必要と説く。ストックとしての財産に着目し、財産管理制度としての信託ニーズに応えうる信託制度の必要性も説かれる。

 第2章(占部裕典執筆)は、受託信託、収益保有信託、財産保護信託、裁量信託、累積扶養信託の信託タイプに着目して、イギリス信託税制の中心となる所得税、相続税、キャピタル・ゲイン税の相互の法律関係を包括的に叙述する。イギリス信託法を念頭において信託税法理の解明、複雑な税法規定の再構成が努められており、特に、日本の課税関係に則してイギリス信託税制を時系列に整理し直し、我が国との相違を比較する。

 第3章(占部執筆)は、所得税とキャピタル・ゲイン税の統合を目的とした「イギリス信託税制の改正案」と現行制度を対比することにより、信託税制の問題点を浮き彫りにする。

 第4章(渡邉幸則執筆)は、我が国の信託税制の特徴、問題点を明確にしたうえで、イギリスの信託(特に裁量信託、累積扶養信託、収益保有信託又は類似の機能)を我が国に導入した場合に、いかなる租税法律関係が生じるか、現行法のもとでいかなる解釈問題が惹起するかを考察する。

 第5章(渡邉執筆)は、第4章と合わせて、第2章で論じ尽くされなかったイギリス信託税制の特徴をより明確にし、複雑なイギリス信託税制の背後にある信託税の基本原則(信託実体説等)を抽出する。

 以上の研究成果は我が国の信託設定ニーズの硬直化、信託税制の老朽化といった我が国の問題点を鮮明に浮かび上がらせている。日本の個人信託の普及を阻害しているとの指摘もあり、本書は日本の信託・税制のあり方に一つの方向性を与えるのみならず、信託スキームの多様化による個人の財産管理・運用計画を開発する端緒をも与えるであろう。

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