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末永 英男 著
「税務会計研究の基礎」

(財団法人九州大学出版会 平成6年7月刊)


 本書は、税務会計研究の基本的視点を法人擬制説と法人実在説の対立として捕らえようとするものである。本書の構成は、「第1部基本的視点」(全5章)と「第2部個別問題」」(全5章及び補章)から成る。

 第1部のうち、第1章は、個人所得税から法人税の分離独立の過程は、擬制説から実在説への転換の過程であり、その背景に増税、大企業への富の集中の課税回避、留保利潤の公平課税の問題があったとする。第2章は、課税公平の問題を統合論(擬制説)・分離論(実在説)の角度から分析し、分離論による公平達成が租税法律主義に叶うとする。第3章は、所得税と法人税の統合論による二重課税排除について、シャウプ税制、インピュテーション方式、ペイトン税制論等を紹介する。第4章は、みなし配当課税問題に関する商法論、税法論を紹介し、非課税は実在説から支持され、課税は擬制説から支持されるとする。第5章は、アメリカ移転価格税制の成立過程を論ずる。

 第2部のうち、第6章は、わが国寄付金損金不算入の沿革を述べ、第7章は、政治献金に関する最高裁商事判決、アメリカ歳入法規定を論じ、寄付金利益処分説は擬制説により正当化されるとする。第8章は、法人税法の交際費課税の沿革を述べる。第9章は、納付法人税について、大正15年改正損金不算入の経緯、費用性本質論を述べ、利益処分論は擬制説により、費用論は実在説により支持されるとする。第10章は、権利確定主義が財産法の収益認識方法であり、資本の食いつぶしと税収確保が実現されるとする。

 近年の法人課税の本質論については擬制説・実在説の理念論を超えたレベルで展開される傾向が顕著ではあるが、伝統的な租税論における擬制説・実在説の論議がすでに解消されているわけではなく、著者が擬制説・実在説の対立として税務会計研究の特質を把握しようとする意図は、なお充分な価値を有している。著書全体を通じる論理構成としては単純明快であり、体系的把握を試みようとする意欲には、若い研究者の覇気が感じられる。多くの先達の研究を引用しながらもなお通説に流されることなく、新しい視点を開拓して法人課税の特質を体系的に整理把握しようとする研究意欲は貴重であり、将来の研究発展が期待されるものである。

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