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渡辺 徹也 稿
「法人分割と課税−アメリカ法を参考として−」

(日本税法学会 税法学 第535号 平成8年5月刊)
「みなし配当課税と租税回避」
(日本税法学会 税法学 第536号 平成8年11月刊)


 「法人分割と課税−アメリカ法を参考として−」は税法学535号に47頁にわたって発表された論文である。たまたま1935年に米、英両国で租税回避に関する代表的な判決が下された。米国におけるGregory判決は法人分割について実質課税の原則を適用したものであること、そして我が国ではNTTの分割などから会社分割に関する税法のあり方の再検討などが要請されているという情況もあることから、租税回避防止を基本課題としつつ、会社分割に関する日米両国の税法の規定を詳細に検討している。特に第3章においては、米国税法におけるspin-off、split-off、split-upの会社分割の制度を検討し、その要件としての事業目的原理等に関するGregory判決を分析し、またその判決後の実定法上の要件の推移などをみて、現在の税法の要件とされている支配要件と仕掛要件および積極的事業活動要件などを細かく検討している。次に第4章以下で、我が国の税法の検討を行ない、アメリカ税法で一定の場合に認めている配当所得のキャピタルゲイン扱いを我が国では「頑なまでに拒んで」きたのが、最近の特例(措置法9条の3、9条の5)により合理的な政策目的があればこれが認められるという先例ができたとし、立法論として、どのような形態で事業をしようとも、税法はそれに介入しないという税の中立性の理念に基づく税制の可能性を論じている。

 また「みなし配当と租税回避」は税法学536号に38頁にわたり発表された論文で、平成2年の商法改正で姿を消した株式配当について税法も課税を廃止すべきかが問題とされている。みなし配当課税を廃止した場合に考えられる租税回避行為を検討し、それに対する対処策等を米国の配当課税の回避規制規定である優先株ベイル・アウト(配当の無税またはキャピタルゲイン税率による引き出し)問題を参考として細かい検討を行なっている。まず我が国でのみなし配当課税の根拠について、未実現利益課税論や所得転換規制論等について問題がない訳ではなく、みなし配当課税が絶対に必要であるという十分な論拠はないと論じ、ただし、これを廃止した場合の租税回避の規制策は必要であるとして、ベイル・アウト規制税制が検討されている。そしてその規制税制の立法モデルとして、譲渡、解散時に譲渡所得として課税するA型については株式の比例的な消却について配当として課税する規制規定をおくことが必要であり、譲渡時に譲渡所得、解散時に配当所得として課税するB型には優先株による回避に対する措置を考える必要があり、また譲渡、解散時に配当所得として課税するC型は法人の事業活動を制限するおそれがあると論じ、結局は現行法を肯定的なものと述べている。このような比較法的な検討は極めて有意義なものと認められる。

 以上、二論文とも日本の現状における税法上の問題点について米国税法との詳細な比較研究を行なったものであり、租税回避行為の規制を税法の基本課題としつつ、事業活動に対する税法の中立性の維持という要請もできるだけ考慮するという立論姿勢も極めて当を得ていると認められる。

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