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シリクンショト・スメト 著
「源泉徴収所得税法の研究−日本とタイの比較を中心として−」

(株式会社成文堂 平成10年2月刊)


 本書は、日本とタイの源泉徴収所得税制度を両国の経済的、社会的又は政治的過程と背景の成因を個別に確認しつつ、歴史的所産の理由と効果を実証的に考察し源泉徴収所得税法の領域における関係人間の法律関係、特に租税行政手続・救済手続は、どのように理論構成され、解決されるべきかを論じている。

 第一章は、タイの源泉徴収所得税制度の概念を主題として、タイ源泉徴収所得税が源泉徴収義務者に対して直接負担させる一つの独立税であるか、または納税義務者に間接に課する単なる徴税方法の一つであるかという問題を提起し、そのため、まずタイ源泉徴収所得税の沿革を考察して、法令を日本語訳することにより、比較法の研究方法を適切に進め、タイ源泉徴収所得税制度の構成要素を分析している。所得税の徴収技術(特殊技術法律要件)、予納的納税、源泉徴収義務者の租税行政手続における法的地位(納税義務者の法定代理人)、租税債権の強制履行方法(連帯租税債務)の諸要素がそれである。

 これらの要素は、国内の法律関係のみならず、比較法的に各国の法律問題を分析し、説明する上でも重要な分析概念であり、同時に説明概念である。タイでは、1に、納税義務者の法定代理人たる源泉徴収義務者と納税義務者との内部求償問題、2に、支払時以降における連帯債務者たる源泉徴収義務者と納税義務者の法律関係が特に問題であると説く。

 第二章では、日本の源泉徴収制度を淵源に遡って、その制度の構成要素は、所得税の徴収技術(特殊技術法律要件)、予納的納税、源泉徴収義務者の租税行政手続における法的地位(国の徴収機関)、租税債権の強制履行方法(滞納時における租税債務者の交替)に分析し、日本方式では納税義務者と国の法律関係が特に問題となりうるとしている。

 第三章では、源泉徴収所得税に関する当事者間の支払請求権、すなわち源泉徴収義務者の納税義務者に対する支払請求権についての法律要件は、タイでは欠いているが、日本における支払請求権に関する法律規定の存在理由などを慎重に検討分析した上で、タイと日本の問題状況を克明に解明している。

 第四章では、源泉徴収所得税債務の確定方式の問題を掲げ、タイには租税債務の確定手続に関する明文規定が存在しないため、日本の「自動確定」概念の有用性と関連問題(納税告知の性質)について考察されている。

 第五章では、過大な源泉徴収にかかる内部求償問題をはじめとする問題を解決する方法として、国と源泉徴収義務者との間の訴訟に対して納税義務者が参加する可能性を考察している。

 本書は、源泉徴収所得税制度について、その構成要素を綿密に分析してそれぞれの問題提起とその解決方法を克明に、かつ、包括的に論旨一貫して論証している。これまでに見られなかった研究業績であり、租税法学の発展への貢献は高く評価できる。

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