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増田 英敏 著
「納税者の権利保護の法理」

(株式会社成文堂 平成9年11月刊)


 本書は、国家の租税法体系が充実したものと評価できるためには、一般的に承認されている法的価値を表す普遍的な原則によって構築されなければならないとして、租税法体系を貫いている基本原則である憲法規定を法的根拠とする租税平等主義(14条)および租税法律主義(30条、84条)の両基本原則が租税法体系の隅々まで貫徹され、その要請が充足されてはじめて納税者の権利は保護されるとの立論を前提とし内容も一貫した体系書として構成されている。

 本書は、三部構成に分かれており、第一部では、租税平等主義の概念を説き、その限界として、これを担保すべき司法裁判所の違憲立法審査権の行使が司法消極主義のため、租税平等主義の基本原則が形骸化を招いていると指摘する。次に、租税法律主義の原則を租税法の質問検査権規定に求め検討し、同規定をめぐる租税訴訟が後を絶たない原因は具体的手続規定の不備にあるとし、さらに、先般、制定された行政手続法においても適用除外されていることは租税法律主義の法的機能の形骸化を示すもので、そこに限界があると鋭く指摘する等、三章に分けて論述している。

 第二部、第三部では、比較法的研究としてアメリカ租税法を取り上げ、前述した第一部の基本原則が、どのように表れているかを論述している。まず第二部では、課税要件規定を租税平等主義の視点から検討し、譲渡所得課税における資本資産概念、宗教団体免税制度、国際的租税回避、租税過料法改革等の四編の論文を掲げ、各章を通じてアメリカでは課税要件規定が租税平等主義の視点から法的にも整備し対応されていることを論証している。

 第三部では、アメリカにおける租税法律主義を機能させるための制度として、どのように整備されているかの点を内国歳入庁の組織と機能、租税争訟制度、税理士制度等四章に分けて検討し、行政庁の組織では納税者に対し公正で高度の透明性が確認されたと説かれる。特に、第三部のうち、租税争訟制度が納税者の権利保護のために存在するといえるほど納税者にとって有効に機能しており、その結果として租税法律主義の要請が制度的にも担保されていると言えると主張している。また、アメリカの税理士制度の研究がわが国の税理士業務と比較し、租税法律主義の視点からみて、アメリカでは納税者の権利を擁護する租税法専門の法律家としての業務を担当するのは登録代理人(税理士)なのであることを明らかにしている。

 本書は、納税者の権利保護の思考がわが国では一向に定着しない現実に一つの問題提起を試み、全編を通じて租税平等主義と租税法律主義の基本原則を視点とした日本とアメリカの双方からの比較論述は高く評価されるものである。

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