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谷口 勢津夫 著
「租税条約論−租税条約の解釈及び適用と国内法−」

(株式会社清文社 平成11年2月刊)


 本書は、租税条約と国内税法との適用関係を体系的に解明することを目的として、両方の適用関係について法理論的な考察を行い、さらには、両方の抵触・競合問題を個別的・具体的に検討しようとするものである。

 国際税法は、各国が国際課税に関して一方的に講ずる国内法上の措置と、他国との合意によって講ずる国際法上の措置すなわち租税条約とに区別されるが、両者が同一の事項を規律している場合もある。そのような場合に租税条約が国内的適用の場面で国内税法とどのような関係にあるかを明らかにするのが本書の課題である。

 第1章第1節では、ウイ−ン条約31条を検討し、条約の解釈にも「実効性の原則」が妥当するとして、OECDモデル条約等の意義及び国内法の参照の問題が論ぜられ、第2節において租税条約と国内法の適用関係について総論的な考察を行い、第2章では移転価格税制との関係の問題を論じ、租税条約の特殊関連企業条項との関係におけるその位置づけや経済的二重課税についての租税条約上の位置づけの検討が行われている。第3章は過少資本税制について、OECDモデル条約9条1項から根拠づけをし、我が国の税制について問題がないかを検討している。特殊関連企業条項との関係は我が国でも移転価格税制の導入(1986年)に当たって議論されたことや、租税条約と過少資本税制との関係については1980年代後半からOECDにおいても同じような検討がなされ、その結果は我が国における過少資本税制の導入(1992年)の際にも考慮に入れられた。第4章はタックスヘイブン税制と租税条約との競合問題を契機に、その研究の過程で、ドイツではかなり以前から国内税法上の他の措置についても租税条約との競合・抵触が論議されてきたことを実証する。なかでも、1992年の対外取引税法制定前からすでに租税条約上の特殊関連企業条項(移転価格税制に関する租税条約)と国内税法との関係が論議されていたり、1970年代末からは過少資本税制の導入をめぐって租税条約との関係も重要な争点の一つとされていたのである。これらの事情に鑑み、ドイツにおけるそれらの議論を消化し分析する本書は、大変有意義である。第5章では、租税条約漁りの規制など租税条約の濫用規制が論じられ、その諸類型を検討し、ドイツ国内法の租税回避否認規定との関係に関する論議を紹介したうえ、最近の日本の条約で設けられた「目的」による規制は問題があると述べる。

 これらの理論から、我が国における租税条約と国内税法との間の、妥当性及び適用可能性に関する一般理論についても、有益な示唆が本書において示されている。思索を重ねた、詳細な理論分析の結果、日本の国際租税法の理論水準はより高く引き上げられたと評しうる。

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