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伊藤 義一 著
「税法の読み方・判例の見方」

(株式会社TKC出版 平成11年3月刊)


 本書は、法律家たる税理士のために、税法の読み方や判例の読み方を説明、解説したもので、税法一般についての解釈の在り方についての著作である。

 本書の構成は、「法律家たる税理士のために」の章において、通達や解説書などに頼らずに条文を読むこと、条文を正しく解釈すること、判例の活用などを述べている。「税法の構成」の章において、税法の構成と解釈との関係、成文の税法、不文の税法(判例、裁決、通達等)などを、「法令解釈の必要性とその限界」の章において、法令解釈の必要性、解釈の原理(解釈の方法の分類等)などを、「税法の読み方」の章においては、解釈の前提(事実の確定と法令の発見)、法令の読み方(大筋の把握から細部へ)、代表的な法令用語、公正な解釈のために、「判例の読み方」の章において、判例を学ぶ必要性と心得、税務訴訟の概要、判例の意義とその重要性、判例の読み方などを記述している。

 著者は、このような一般的な各項目について、著者の主税局勤務時代の税法改正に関する豊富な経験をもとに多くの具体的な事例をとりあげて、場合によっては図表等や珍しい事例をも用いて丁寧な説明を行っており、それにより読者の理解を容易にしようとしており、その試みは立派に果たされていると思われる。

 本書を熟読すれば、複雑、難解といわれる税法規定の構造についての理解に大いに役立ち、規定解釈についての基本的な考え方が養われることになるであろう。このような意味において各税法の規定の解釈に際し、非常に参考になるといえるところである。

 税法解釈の困難性は、各税法における規定の前提となる私的経済取引の理解の困難性、あるいはそれらと税法固有の理論との関連に基づくものと思われることから、本書を読んでも直ちに具体的な各税法規定についての説得力ある解釈を期待できるものではないが、基本的な考え方および規定の読み方について有益であり、判決の読み方を通じての判例の見方の把握に役立つものである。

 なお、本書には、つぎのような問題も指摘されよう。すなわち、税法解釈と他の法律分野における解釈の在り方とを比較し、税法解釈の特色的なものを示した方が理解され易かったのではなかろうか。また、著者は、「租税正義の要請に合致した解釈を」、重要な解釈の指針においているが、租税正義は、解釈の問題ではなく、立法の問題とする見解もある。さらに、何を租税正義とみるかについては著者自身も一般的には触れていない。

 しかしながら、このような問題を含んでいるとしても、本書が税法の読み方、あるいは判例の見方について、有益な考え方や方法を詳説していることからさほど影響はなく、その内容は高く評価できるものと考える。

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