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山崎 昇 稿
「電子商取引における国際的租税回避の可能性−資本所得・法人居住地の可動性と租税回避否認についての考察−」

(税務大学校論叢第33号 平成11年6月刊)


 本論文は、高度情報化と経済のグローバル化の同時進行により発展しつつある電子商取引における、国際的租税回避の可能性の問題を究明しようとするものである。この問題に関して、OECD租税委員会の作成した「電子商取引:課税の基本的枠組」報告書は、各国の課税主権の維持と電子商取引から生じる課税ベースの各国間での公平な配分が必要であると述べ、国際間の二重課税や意図せざる課税の空白を回避する必要があると指摘している。これは、電子商取引に関する課税枠組みについての一般的なアプローチを示したものといえる。

 しかし、本論文は、国家間の税収配分よりも、むしろわが国の課税主権の維持という観点から、次のような方法で研究を進める点に特色を有する。まず、電子商取引を利用して国際取引を行なった場合に生じるふたつの「課税の空白」について考察し、その対応策を検討する。ひとつは、居住者がポートフォリオ投資をインターネットを通じて直接行った場合に、海外で発生した投資に係る資本所得が課税繰延べとなる、という課税の空白の問題がある。もうひとつは、法人は一般的にその設立地が居住地国とされるが、居住者がインターネットを利用してタックス・ヘイブンに法人を設立した場合には、その法人の実質的な居住地国においては、その稼得する国外所得が課税されないことになる、という課税の空白の問題である。更に、国際取引の容易性、低コスト化とネット情報の普及によって生ずる国際的な「租税回避」の否認についても検討している。本論文は、「課税の空白」と「租税回避」について、(1)資本所得の可動性から生ずる問題、(2)法人居住地の可動性から生ずる問題、(3)国際取引を利用した租税回避の問題点を分類して説明している。また、インターネットによる国際的な電子商取引から発生する国際的租税回避規制税制の問題や、集団投資ファンドに対する諸外国の課税方式を詳細に検討している。更に、国際取引を利用した租税回避の否認の問題として、タックス・プランニングと租税回避の区別及び租税回避否認の学説・判例を紹介している。

 電子取引に関する税制度のあり方については、本論文執筆当時、欧州連合の態度表明は未だなされておらず、アメリカ合衆国では電子取引(new economy)の発展を待つため課税留保が表明され、かつ、日本国は旗幟鮮明にしていなかった。そうした状況下がいち早く「電子商取引における国際的租税回避」を果敢に取り上げ、将来惹起し得る問題点をそれぞれ解明しているのは、国際租税実務に裨益することが大きいものと考える。

論叢本文(税務大学校のホームページへリンク)(PDF)・・・・・・1.85MB


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