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近藤 義雄 著
「中国現地法人の経営・会計・税務」

(株式会社 中央経済社 平成14年1月刊)



 本書はWTO加盟を迎えた中国に進出する日本企業に必要な会計、税制などの実務知識をまとめた著書であるが、著者は既に「中国投資の実務」(1996)、「中国投資の税務戦略」(1997)の2冊の著書を刊行しており、本書はこれらの研究を踏まえて総括的にまとめあげたものとも言える。中国への投資に関連する投資環境、会計、税などの一般的知識を述べた第一編と中国投資に関するトピック的事項の解説をした第二編、および中国進出企業の当面する税務問題を述べた第三編から成っている。

 まず、本書の最大の部分を占めている第一編は、第一章で投資の概要について外資に対する中国の政策の歴史的動向を説明し、最近におけるIT産業育成や中西部地域開発等の政策やWTO加盟後における新措置なども説明されている。このような政策に伴う優遇税制も具体的に説明され、WTO加盟に伴う国内企業に対する政策(例えば、弱者保護措置、産業構造の改革)も説明されている。あわせて投資に関する法制、企業制度の解説がされ、為替管理の解説が加えられている。第二章で中国の税法の説明がされ、その歴史、現行体系、各税の内容、さらに今後の改正動向まで説明され、日中租税条約も詳しく説明されている。各税のうち企業所得税、流通税(増値税、営業税、消費税)については、特に詳しい解説がされ、また、個人所得税については多くの設例も含めての解説がされている。第三章では会計規定について、外国系企業に適用される七基準が和訳されており、財務諸表の体系、科目の解説に加えて外貨換算会計、キャッシュフロー計算書、リース会計、税効果会計、連結会計、その他、中国特有の会計である合作企業会計、中方会計などについて詳しい説明がされている。

 第二編「現地法人の実務」では第一章で、外資企業の持分の売却などに関する持分変更、合併、分割などに関する規定、及び、それに関する税務、中国投資に際して直面する資産評価の実務の説明がされ、次に特別の規制がある投資会社と中国企業の集団化を進めるための特別の制度である財務公司についての説明と香港子会社経由の投資の留意点の説明が細かくされている。第二章では現地法人の税務について、直接投資の場合と子会社を通じて行う場合に分けて設例をもって説明し、また、95年から認められるようになった中国投資会社による投資の場合についての設例が示されている。さらに現地法人としての運営に係わる保税制度や増値税の輸出還付制度についての解説がされ、移転価格税制の説明などもされている。

  第三編では、駐在員事務所課税、事業所(工事現場等)課税、プラント課税、技術(無形資産譲渡)課税、不動産取引に関する税、リース取引の税問題などと在中日本人従業者の個人所得課税についての詳しい解説がされている。

 以上のような内容であるが、本書は日本からの中国投資に関連する会計、税法に関する現段階での最も行き届いて信頼できるものであり、評価できるものと考えられる。例えば、会計諸規定についても原文の直接の翻訳がされており、諸制度や規定の説明にしても、単なる説明ではなく、歴史的沿革や今後の見通しなども付け加えられており、説明の対象項目も対中投資に関することは網羅されており、説明の仕方も設例を加えるなど分かりやすくする配慮がされている。本書は、理論研究の類の著書でなく制度解説書という性質のものではあるが、極めて水準の高い内容のもので、この領域の書の在り方に一石を投じたもので、その希少性と先発性は評価されるべきものと認められる。

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