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増井 良啓 著
「結合企業課税の理論」

(財団法人東京大学出版会 平成14年3月刊)


 本書は、租税政策論の観点に立って、関連企業間の無償、高額・低額取引等に係る結合企業課税の構造を「所得振替防止」と「課税単位の拡張」という2つの視点から整序した学術的水準の高い作品である。

 本書は、大きく序章に続く、2部構成をとっている。第1部では、「比較法による検討」と題して、わが国の法人税法は「個別法人単位の規律」を基底として成り立っているとし、それ故に関連会社間で所得を振り替えたり、別法人を設立して税額を節減しようとする誘因が内在するとする。
 更に、現行法人税法上、会社間所得振替に関連して問題となる条項を取り上げ、条文の構造と解釈の分岐点になる面を丹念に跡づけている。続いて、判例を取り上げて、会社間取引をどのように扱っているかについて、制度上の問題点と関連づけた考察がなされ、判例に示された対応の限界について、立法論の観点からどのような提案がなされているかの動向の紹介につながる。
 かかる検討を通じて、著者は2つの視点、すなわち、「所得振替防止」並びに「課税単位の拡張」の観点から外国法を展望するという行き方により、会社間取引に伴う所得の移転が各国法においてどのように扱われるかについての考察に移る。
 はじめにドイツ法が、続いて、アメリカ法が考察の射程内で分析検討される。考察の結果は、上記二つの視点を共存させるというところに特色があるとされる。著者は独米法制から学ぶべきものがあるとすれば、単一の視点ですべてを割り切るのではなく、多元的な考慮に基づいて異質な制度を組み合わせることこそが「実践知」であるという。

 著者は、検討の結果、益金・損金の両面に係る詳細な別段の定めを設けることを念頭におき、現行の移転価格税制の適用範囲を国内取引に対して拡充するという提案を行っている。すなわち、移転価格税制の国内取引への拡充によって、正常取引があったものとして関連会社の所得を計算し直す規定を設けることを提案している。そのことに執行上の困難が伴うときは、限定された範囲の結合企業に損益通算を認めるべきであるとして、重畳的組み合わせの提案が最善であると考えている。 

 第2部では、欠損金の取扱いについて、幾つかの角度から分析のメスが入れられ、検討がなされる。結論として、先に掲げた「所得振替防止」と「課税単位の拡張」を中核とした複数の措置を講ずることが理論的方向性を示すものであると結んでいる。

 本書の学術的貢献は、租税政策論の観点に立って、結合企業課税の構造を「所得振替防止」と「課税単位の拡張」という2つの視点から整序したことである。そこでは、(1)所得振替のメカニズムを解明することに力点をおき、その法的構成を機能的に整序したこと、(2)法人税の課税単位との関係において、会社間取引課税のあり得べきパターンを比較法学的な見地から実証的に示すことにより、結合企業課税のあり方を解明した点にある。

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