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藤田 香 著
「環境税制改革の研究 ―環境政策における費用負担―」

(株式会社 ミネルヴァ書房 平成13年11月刊)


 本書は環境問題について、費用負担の原則から環境保全を重視した税体系に移行することを検討したもので、第一章では環境税は税体系全体との関連において考察することが必要であるとして、環境税は応益税か応能税かを論じ、また、汚染者負担の原則(PPP)からすれば目的税とすることも出来るとしつつも、PPP的課税には限界があると指摘している。また、環境税は理論的には、環境汚染が無くなれば税収もゼロとなるものであるが、現実的には課税の仕方によって多額の税収をあげるものにもなるので、如何なる減税と組み合わせて実施するか、税制改革の理念が問われる問題であると論じ、更に、国際化されている現在、一国による環境税課税の他国への影響や共通税制にする場合の問題など国際的見地からの検討も必要である、と論じている。

 第二章では経済学的観点からの理論的検討を行い、外部不経済に対するピグー的課税は、そのための社会的費用の計測など実行上の問題があり、これをより実効性あるものとしようとするボーモル=オーツ税の理論も全体的な租税諭の立場からの検討が必要であるとし、また、環境税の導入は環境改善と税収増の二重の配当があるという議論の検証については、環境改善の効果に関する情報が必要条件であるとして、これらの理論は現実に適用する段階で諸条件を加味していくことが必要であるとしているが、いずれにしても環境税は税制改革に大きな意味をもつと論じている。

 第三章からは環境税を既に実施している国の事例研究が行われ、環境保護目的から1991年に導入されたスウェーデンの窒素酸化物排出課徴金が検討され、先進的改革としての意義を評価しつつ、これは、課税と補助金をワンセットにしたもので、これまでの租税原則では説明できない新しいものであるとして、今後、環境税全般について、その有効性と既存税との調整などを検討する必要がある、としている。
 
 第四章では環境税を課すことによる企業の国際競争力への影響という問題について、スウェーデンではどのような対策を採ってきたか、また、その意味するものは何かを検討し、結局、国際競争力の観点から産業部門に対する課税の軽減が行われ、その減収は炭素税の引き上げと非産業部門の電気エネルギー税の増収で賄われ、全体としての改正の流れは"green tax‐swap"(労働課税と環境関連税との代替)ということになると述べ、これが伝統的な租税原則からは問題があるとすれば、いかなる新しい原則を打ち出すべきか、検討課題であるとしている。このような環境税の導入は所得税など既存の税の減税の財源としての位置付けも見られるようになるが、次の第五章においては、この財源調達型環境税への展開が論じられ、スウェーデンでの展開は、所得や消費への課税を主軸として来たこれまでの税制のグリーン化と言う今後の税制改革に大きな示唆を与えるものとしている。

 第六章では、このような資本、所得中心型税制からエネルギー、資源消費抑制型税制への税制改革を進めてきたオランダの状況を、第一段階の個別賦課金、第二段階の一般燃料賦課金、第三段階の燃料環境税への展開を検討し、政策との関連性をもつ新しい税制への展望を論じており、第七章では環境問題について地方自治体の役割と費用負担の一例としての「下流負担金」の問題を示した琵琶湖総合開発を検討し、最後の第八章で日本型環境税のあり方として、地方公共団体による法定外(普通、目的)税としての環境税の実施への期待を述べている。

 20世紀的な「成長」の問題から21世紀的な「持続可能な社会の構築」が問題になっている現在、本書は環境税問題について、理論的、実証的な研究を行って環境税へのシフトを高める税制改革を志向した著書であり、引用の資料も詳細であり、各章で要点をまとめた租税諭的考察がまとめられている充実した内容の著書であり、新しい租税原則や税制改正の進め方など、今後の検討課題とされている面はあるものの、高く評価することが出来るものである。

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