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松宮 信也 著
「イギリスのグループ税制 ―解説と実務Q&A―」

(株式会社 清文社 平成14年11月刊)


 企業集団税制については、米国・フランス・日本等が連結納税型をとっているのに対して、英国は損益振替型を採用している。

 本書は、その英国で実務に従事したことのある会計士が、英国駐在日系企業担当者の参考に供することを目的として、2001年度財政法(2002年度税制改正案を含む。)に基づき、英国の企業集団税制の主要なポイントについて制度の解説を行い、さらに、読者の理解を深めるため問答形式で実例をあげて解説している。

 著者は、まず、法人税法において親子会社間の損益振替を規定する「グループ・リリーフ」とその変形である出資法人と合弁会社間の損益振替である「コンソーシャム・リリーフ」について、適格グループ、譲渡の対象となる損失、相殺の対象となる利益等について解説する。

 次いで「ノーゲイン・ノーロス・ルール」を取り上げる。このルールは、キャピタル・ゲイン税法(TCGA1992)に規定されているが、著者は、英国の企業集団税制を効果的に活用するためには、「グループ・リリーフ」だけに注目するのはいわば片肺であり、キャピタル・ゲイン税法の理解が非常に重要であるとして、かなりのスペースをこのルールの説明に割いている。

 「グループ・リリーフ」に係る法人税法上の規定は、キャピタル・ゲインに優しく、キャピタル・ロスに厳しい。キャピタル・ゲインは相殺の対象となる利益であるが、キャピタル・ロスは、恣意的な利益操作を排除するため、事業外損失され譲渡の対象とならない。

 そこで、集団企業税制の実務においては、キャピタル・ロスをいかに上手に処理するかが重要な問題となる。

 一方、キャピタル・ゲイン税法では、適格キャピタル・ゲイン・グループ当事者間での資産の譲渡については、当該資産がグループ外部に売却される時点まで、譲渡損益の認識が繰り延べられることを規定している。これが、「ノーゲイン・ノーロス・ルール」である。

 著者は、このルールを有効に活用してキャピタル・ロスを処理することを提唱するが、一例をあげると、グループ内の甲社の含み損のある資産を含み益のある資産を持つグループ内の乙社に移転し、まず、乙社において含み損を実現し、次ぎにしかるべき時期に含み益を実現すればキャピタル・ロスは相殺されることになる。

 本書は、英国の損益振替型のグループ税制というかなり特殊な外国税制についてキャピタル・ロスという絞り込んだ観点から考察したものであって、いささか普遍性にかけるが、イギリス法人税法の関連法規原文を一から読みこみ、解釈の難しい点については英人パートナーに確認する作業を繰り返した努力の跡が十分にうかがわれ、しかも、表現も簡明、平易であり、従来の外国税制の日本語解説書に見られない高いクオリティに仕上がっていることを高く評価したい。著者のいう「イギリス法人税にまったくの門外漢から、ある程度基礎的理解を有する方まで、幅広い実務の引用に耐えることを目的とした」という当初の意図は十分に実現されている。

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