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北口 りえ 稿
「推計課税の本質論 ―補充的代替手段説に代わる新たな説の提唱−」

(熊本学園商学論集 第9巻第1号 平成14年9月刊)


 本論文は、本来あるべき実額課税の補充的代替と考えられている推計課税について、これに代わり申告納税制度に内在する国民の調査協力義務違反に対する間接制裁として位置付けることを提案しているものである。論者はまず第1章で会計帳簿の記録、整備は青色申告に伴う義務であるが、それに伴う当然の権利も伴うものであり、いわゆる青色申告の特典と言われるものにはこのようなものも含むと解されるとする一方、記帳や帳簿の保存義務およびこれに関連する調査協力義務は、憲法30条による消極的義務と言う以上の、自ら恩恵に与かっている共同社会への対価として積極的な義務であるとして、判例の動向からもこれを根拠付けている。申告納税制度に内在するこのような調査協力義務への違反に対する罰則として、質問検査妨害に対する罰則の適用があるが、記帳、保存義務違反についても本来は罰則を課すべきところである、と論じている。

 そして、推計課税について、通説(事実上推定説)と別世界説(実額課税とは別の外形標準課税とする説)を検討し、実額課税からは問題があるとし、補充的代替説(実額課税とは別の代替課税とする説)もなお実額課税に捉われていると批判し、推計課税はむしろ申告納税義務不履行に対する間接制裁課税であるとする「間接制裁的代替処分説」を提唱している。そして、我が国の納税制度は「白」色申告者と「青」色申告者とに分かれるとするより、実額による申告納税者と推計課税者とに分けて捉えるのが適切であるとし、このような観点から推計課税の要件、税務調査の必要性等を検討している。

 本論文は推計課税の本質について通説に捉われず、申告納税制度の在り方の原点から見直してみた論文で、なお検討を要する問題はあるとしても、ナイーヴな発想と、しっかりした立論は、奨励賞として表彰するに値するものである。

論 文(PDF)・・・・・・1.52MB


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