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赤井 伸郎、佐藤 主光、山下 耕治 共著
「地方交付税の経済学」

(株式会社有斐閣 2003年10月刊)


 本書は、ミクロ経済学的な手法を用いて公共部門の経済活動を評価するという公共経済学の立場から、地方交付税制度を取り上げたものである。本書は、地方財政と地方交付税制度をめぐるこれまでの研究成果を整理し、制度の建前と実態を峻別し、交付税制度に関わる各主体、すなわち、国と地方自治体の行動インセンティブという観点から、地方交付税制度をめぐるさまざまな問題を実証的かつ理論的に検討し、新たな制度設計を提案している。

 第1章では、国は地方交付税を通じて地方圏を優遇してきたが、国の役割は最小限にすべきとする改革の流れから地方交付税を見直すべきであると問題提起されている。第2章では、地方交付税の決定の仕組みが取り上げられ、本来あるはずの現場(ミクロ)の必要性からの積み上げよりも、中央(マクロ)の裁量によって決定されている実態が浮き彫りにされている。

 第3章では、補助金についても本来の機能が発揮されず、財政の公平や効率を損なっている実態が明らかにされている。第4章では、地方交付税は資源配分を歪ませ、地方自治体の税収拡大やコスト削減への努力を阻害するものとし、現行制度の改革の必要性が説かれている。第5章では、実証的なデータ分析により、地方交付税に依存しているために、経常経費については平均6〜9%程度、歳出総額の8〜27%程度が浪費されているとの推計が示されている。

 第6章では、地方交付税の本来の機能を回復するために、地方交付税と国庫支出金の両制度を統合した新しい「ブロック補助金」制度が提案されている。第7章では、地域間財政力の格差是正を効果的に発揮するために、国の責任による財源保障を基礎サービスに限定し、財政調整機能は客観的な基準に基づく地方間の水平的財政移転制度で実現し、残りのサービスは各自治体が責任を負うというシステムが提案されている。

 最後の第8章では、第7章で提案された、地方税制度、地方交付税制度、および国庫支出金制度の三位一体改革に対するありうべき批判が検討され、さらに諸制度との調整や政治的な側面についても考察が加えられている。

 以上のように、本書では、地方交付税制度をめぐって緻密な理論的検討と実証分析が行われているとともに、今後の制度設計を考えるうえでの重要な論点も提示されている。自治体財政が厳しい状況にあり、地方交付税制度の行方に大きな関心が集まっている時期だけに、本書は経済学の立場からこの問題に果敢に挑戦した意欲あふれる作品と評価することができよう。

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