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酒井 克彦 稿
「いわゆる金融商品の損失等を巡る課税上の問題」

(税務大学校論叢 第41号 2003年6月刊)


 本稿は、近時問題とされているいわゆる金融商品の取り扱い、特に損失が生じた場合における他の所得との損益通算の在り方を対象としている。本稿自体は平成15年6月に発表されたものであり、当時の税制改革の時にも、若干、検討されていたところであるが、それらとは異なる理由、論拠に基づいて、かつ、詳細な根拠を提示しているところが評価できるところである。

 本稿は、まず、従来の利子所得や配当所得などの所得区分を廃止し、金融商品といわれる利子、収益の分配金、剰余金の分配などのほか、譲渡所得や雑所得とされてきた金融商品に係るキャピタルゲインや雑所得等に該当する、いわゆる金融類似商品からの所得を統一的に括り、証券取引法上の「有価証券」を中心的にした「金融所得」区分を創設し、それにより内部通算の形によって損益通算を可能とすることを立法論的に意図するものである。

 更に、その際、平成15年から上場株式等の譲渡等について採用された特定口座を拡張する形の「金融所得」の源泉徴収制度を創設すると同時に、その他源泉徴収から漏れた所得の清算は、申告分離課税によることとする、という新しい施策を提唱している。

 まず、その前提として、現行所得税法の利子所得の必要経費否定性、社債、株式に係る資産損失の認められないこと、などを詳細に検討していて、現行制度の利子所得、配当所得の規定の解釈上、限界があると言わざるをえない、としている。利子・配当所得区分を廃止し、税制調査会や経済財政諮問会議が金融商品に係る損失の一体化を図るべきとの見解を披露している。

 しかし、それら税制調査会等の意見には、損失の取り扱いの中立性はあまり取上げられていないのではないか、と批判している。また、損失を譲渡損失として捉え、全面控除の対象とすべきとの見解に対して、金融所得内における通算を限度とすべきであるとする。その理由は、投資に係る損失は、投資に係る所得との関連で考慮すべきとする。

 このように、本稿は、ここ2、3年問題とされている、その意味では必ずしも新しいとはいえない問題点について、単なる立法論ではなく、詳細な検討の上、金融商品を統一的に扱う必要性を論証しようとしているものである。その際、それらを特定口座を拡張して源泉徴収制度にのせる反面、それをカバーする部分を申告制度によることとしているなど、現実的な方策も準備している。また、税制調査会等の見解や有力学説とは異なる新たな対応の仕方、見解、考え方を提示しているところにも、評価すべきものがある。

 反面、何故、金融商品について扱いを改める必要があるのか(損失通算にあるのか。また、何故、損失通算が要請されるのか、など)については、あいまいと思われる個所もあるが、前述の詳細な検討などを考慮すれば特に問題にするほどではない。

論叢本文(税務大学校のホームページへリンク)(PDF)・・・・・・688KB


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