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成瀬 秀雄 稿
「企業組織再編における租税回避行為の否認」

(未発表)


 本稿は、平成13年度に導入された企業組織再編税制における租税回避否認規定の問題点と解釈・運用のあり方を論じるものである。

 本稿では、まず、組織再編税制の実態を従前の制度と比較しながら検討し、同税制において想定される租税回避の形態に対応した個別否認規定(未処理欠損金額の引継ぎ制限等)と包括的否認規定(法人税法第132条の2)の内容とその問題点を指摘する。

 次いで、租税回避行為の概念を節税又は脱税の概念と対比して明確にするとともに、平成13年度改正前の法人税法第132条に係る解釈論を整理・検討し、改正後の同法第132条の2の規定の解釈への応用を検討する。

また、我が国の組織再編税制がアメリカの税制に倣って設けられたことに鑑み、更には、比較法的な考察をするために、アメリカの組織再編税制における租税回避否認規定とその解釈規範である事業目的原理と段階取引原理を考察する。

 これらの検討を踏まえて、最終章において、組織再編税制における包括的否認規定の解釈のあり方(明確化の必要性)を論じている。

 この場合、特に、参考となる事例として、いわゆる逆さ合併において欠損金の繰越(引継)を否認した広島地裁平成2年1月25日判決を検討し、現行規定との関係について考察している。

 最後に、包括的否認規定における「法人税の負担を不当に減少させる結果」の解釈・認定については、納税者と税務官庁との対立が不可避であることに鑑み、国税庁がその運用方法を明らかにしている事前確認制度において、納税者が組織再編に関して事前照会を求めたときには、アメリカの例に倣い、税務官庁は前広に文書等による回答に努めるべきであると説く。

 以上のように、本稿は、組織再編税制における租税回避否認規定の問題と包括的否認規程の解釈・運用のあり方を論じるものであるが、当該税制の導入は日が浅く、かつ、解釈上、最も困難視されているが故に、時機を得たテーマである。しかも、その内容においては、当該税制の問題点を的確に把握し、解釈上、最も問題視される包括的否認規定に関し、従前の租税回避否認の解釈論、関係裁判例、比較法学的考察を加えて、当該規定の解釈のあり方を総合的に論じたことが評価できる。そして、このような解釈については、納税者側と税務官庁側との間に、コンセンサスを得られ難いことを考慮し、事前確認制度の俎上に乗せるべきと説くことにも説得力がある。

 もっとも、本稿で論じられている解釈論については、従前の域を大幅に超えるものとも評価し難いが、前述の評価と論文作成が適正であることを考慮すれば、受賞論文に該当するものと思料する。

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