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松田 直樹 稿
「税務専門家の責任・リスクへの対応策」
 ―主要国との比較を中心に―
(未発表)


 本論文は、職業専門家を取り巻く最近における著しい経済社会環境の変化に伴い、職業専門家を取り巻くリスクも多様化しかつ質量共に伸張してきたことを反映して、主に税理士を巡るリスクへの対応について多角的な角度から分析検討を行った作品である。

 そこでは、税理士に限定することなく、幅広く職業専門家としての責任にも言及しながら、専門家に求められる注意義務の内容とレベルを分析的に明らかにしている。著者は、税理士にとっては節税義務があることは税理士法第1条から導かれる解釈であるが、税務通達を含む関連税法全般について把握した上で税務代理を行うことを期待することは必ずしも現実的ではなく、したがって、顧客の税負担について最も有利な手段を尽くさなかったことをもって、税理士に過失があったと判断することは適当ではないという解釈を打ち出している。

 その上で、職業専門家の「過失責任」について検討する。英米法によると「相当の注意」を欠いたことによる「通常の懈怠」が生じた場合が問題とされ、その意味で、税理士には「強度の注意」を欠いてはならないのであるが、最も有利な節税義務履行が求められているわけではない。しかし、「標準的な注意」をもって避けられなかったことまでも「相当の注意」義務を払ったことにはならないという事情を明確に主張している。

 その他、税務専門家のリスク軽減対策としての税理士職業賠償責任保険の特徴と改革の方向性を指摘し、更に裁判外紛争処理(紛議調停制度)に言及し、加えて、税理士のビジネス・チャンスとリスク増大に伴う研修等の充実にも力を入れるべきことなどに触れている。

 税理士にとって訴訟提起に伴うリスクを回避することが極めて重要であるが、一旦紛争が生じた場合、訴訟以外の手段として「代替的紛争処理制度」(裁判外紛争処理方法)があり、法律家が介入しないことを前提とした国民の私法への参加を促進するものとしての効果を伴うことを解明している。

 税務専門家が犯すことがある問題として、悪質な租税回避行為等があるが、これらに対する監督姿勢の強化、職業研修制度の実施、職業資格停止処分およびその手続の簡素化等を扱っている。

 本論文は、税務専門家の責任並びにリスクへの対応を多面的な角度から論じており、その広範な考察は他に類をみない論文である。また、外国での経験を生かし、諸外国の制度についても適切に配置し、部分的に比較制度論的な考察を展開しており、優れた研究であると評価され、租税資料館賞の受賞に値するものと評価された。

論叢本文(税務大学校のホームページへリンク)(PDF)・・・・・・760KB


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