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古賀 敬作 稿 (横浜国立大学大学院 院生)
「産業構造の変化からみた租税条約の意義」 ―自由貿易協定を素材として―
(国際税務 平成16年11,12月・平成17年3月刊)


 近時は、アメリカとメキシコとの間の自由貿易協定、日本とブラジルとの間の自由貿易協定など、関税を原則ゼロとする自由貿易協定が実現され、それに対応する租税条約が締結されている。その場合、社会や経済の発展に応じた条約の在り方や機能の検討が要請される。

 本論文は、経済におけるサービスやソフトの占める役割が高くなるに連れて、モノ中心の産業の時代につくられた物的所在を重視する国際課税、とりわけ租税条約上のルールがどのように変わって来ているか、ということを、マルチ間の国家協約である自由貿易協定の中に占める租税条約の内容の変化を通じて検討している論文である。

 自由貿易協定としては、先ず、モノ中心時代の代表としてGATTをとりあげ、米国のDISCやベルギー、フランス及びオランダの三国税制が輸出補助金に該当するとして問題とされたのは、例えば、三国税制では、国内製造会社の所得のうちで外国の支店等が獲得する所得への免除の是非が問われたのであり、DISCはモノの輸出による所得に対する課税延期が問題とされたのであるとしている。そして、租税条約はGATTが目的とする資源のよりよい配分のための原産地規則に租税条約の「外国源泉所得」は適合するものとして、GATTでは租税条約に大きい意義を認めている。それが、サービスに係る自由貿易協定であるGATSの場合、サービス自体は無形でそれ自体に自由化促進の基準は求め難く、むしろその提供者に着目してその自由な移動の保障によりその目的を達成しようとするものであり、その際、全ての国において居住地課税で行い、使用地主義を採用すべきではないと論じ、このような違いからGATSにおいては租税条約上の課税ルールを適用除外としていること、およびその正当性が検討されているとしている。

 最後に、モノの自由化に加え、投資、サービスおよび知的財産権の貿易をも含めているNAFTAでは、課税の問題は専ら租税条約に一任することとしているが、米、加、墨の三国間における租税条約の締結過程と市場統合の経緯を照合して検討し、それによる対応が検討されている。

 結局、モノからサービスへの経済転換に伴う課税情報の不確実性の増大に対して、租税条約は自由貿易の促進をはかるよう機能してきており、当局間の情報交換の促進もあって、資源配分の効率化に寄与して来たし、これからもこのコンセプトを評価基準とすべきことを論じている。

 租税条約が、資源配分効率性について、どの程度の税収配分機能を果たしているかについて、更に実証的な検討が必要とするとして具体的な解決案を示すものではないというような、更なる考察が望まれる点はあるが、しかし、本稿のテーマは先見性があり、その内容は外国の学説も含めて、将来の租税条約の在り方を検討するものであり、評価に値すると認められる。

論 文(PDF)・・・・・・1.08MB


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