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川田 剛 ・ 徳永 匡子 共著
「OECDモデル租税条約コメンタリー逐条解説」

(税務研究会出版局 平成18年1月刊)
 

 OECDモデル条約は、条約本体は全体で31条であり、うち実体規定は僅か29条で、解釈について差があることも多いので、そのコメンタリーが付属して規定されているが、これはOECD加盟国の代表者によって合意されているもので、租税条約の解釈、適用において、このコメンタリーの参照が不可欠とされている。OECDモデル条約とこのコメンタリー自体についての解釈はすでになされている(例えば、「OECDモデル租税条約」川端康之監訳2003年11月、日本租税研究協会)が、条文の日本語訳文が列挙されているだけで、内容についての説明は、モデル条約の解説書で各条文の解説の一部としてなされているが、コメンタリーについてまとめた解説書は未だ出されていなかった。

 今回、このまとめが本書によって初めてなされた。従って、本書の内容はこのコメンタリーの第1条から第31条までの各条文の解釈が主であるが、それぞれの条文について、その条文の趣旨、我が国の租税条約締結方針、及び最近の改正についての説明が加えられ、解説についても適宜に図解を用いて理解をし易くするような配慮がなされている。

 まず、「序章」において、モデル条約の目的、歴史、その影響、概要が説明されており、「歴史」については、国際連盟から、OEEC及びOECDへの流れが述べられ、「その影響」では租税条約の解釈、指針として用いられているほか、個別の租税条約等の条文に取り込まれもしているとし、さらに、その「概要」には「一般的見解」のうちに、各国がその意見を適用する方法を表明した「所見」やその意見合意できないことを表明した「留保」があることを述べている。コメンタリーの内容に入って、第1条(人的適用範囲)に関しては、最近の改正動向や我が国の締結方針を述べ、その適用範囲について特にパートナーシップへの適用について図表入りで詳しく説明されており、また、注では最近の改正内容の詳細に関する資料が引用されており、「条約の濫用」の部分についてはコメンタリー以外であるが、関連するOECD「報告書」について詳細な説明なども行われている。これらは本書の内容に関する一端であるが、第5条(恒久的施設)では2000年の電子商取引に関する報告書の内容や2005年改正の経緯などが詳細に説明されている。また、第9条(特殊関連企業)では、従来の我が国の本条文についての留保は92年改定の際に撤回されていることを述べている。第10条(配当)関係でも、いわゆる「追掛け課税」の禁止の趣旨の説明、配当の二重課税調整の相違などの説明などがなされている。

 以上の様に、本書は単なる「コメンタリー」の翻訳ではなく、「コメンタリー」をまとめ、その説明を通じてOECD租税条約の全体を正確に把握させようとしている労作であり、特に最近の改正の経緯など、詳細に追跡され、整理されている点、実務家にも研究者にもきわめて有益な著作であると認められる。


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