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栗原 毅 著
ユーロ時代のフランス経済
 ―経済通貨統合下の経済政策の枠組みと運営―
(株式会社清文社 平成17年7月刊)
 

 本書の目的は,第1に,フランスの経済政策を具体例として,ユーロ共通通貨圏での経済政策の枠組みと運営について,その最新事情を詳解することにあり,第2に,管理経済(デリジィズム)といわれたフランス経済が,いかに欧州化・自由化したかについて,その変貌過程を浮き彫りにすることにある。

 本書は,全体で9章(序章と補章を含む)から構成されている。序章と第1章は,本書の総論部分に相当する。まず,序章では,ユーロ導入の経緯がフランスの視点から描かれており,続いて,第1章では,ユーロ導入に伴う統一金融政策とそれに対するフランスの対応が具体的に解説されている。次に,第2章〜第6章は,本書の各論部分に相当する。第2章では,ユーロ参加国相互の財政政策の監視・強調の枠組み,第3章では,フランスの予算制度や予算編成の仕組み,第4章では,2006年から実施される「結果志向の予算編成」の試みが,それぞれ詳細に解説されている。次に,第5章では,社会保障財政の租税化が取り上げられ,社会保障財政の財源として社会保険料主体から所得課税である一般社会税の導入,そして,最近の年金保険,医療保険改革などが解説されており,わが国の社会保障財政と税制のあり方を考えるうえで,多くの示唆を与えてくれる。また,第6章では,フランスの租税政策,および税制の歴史と特徴が,相当の頁数を割いて浮き彫りにされている。本章では,EU単一市場の導入と併せて,EU加盟国間で付加価値税を中心とした間接税の調和が図られていることを指摘するとともに,フランス革命以来のフランス税制の歴史と特徴,所得税と財産連帯税に見られるフランス税制と富の分配の状況が手際よく整理され,かつ詳細に説明されている。最後に,第7章では,現在の統一金融政策・財政政策の枠組みがEU各国の景気動向にプロサイクルな側面を有していることなど,今後のユーロの行方を占う鍵のいくつかを提示することにより,本書の議論を総括している。なお,補章では,フランス経済を調査するうえでの基本的な統計資料,法令調査方法などが整理されており,また,各章の「コラム」では,フランスの興味深い事実が数多く紹介されるなど,フランス経済を分かりやすく解説する工夫が図られている。

 本書は,ユーロ導入後のフランスのマクロ経済政策(経済・財政・税制・金融政策)に関する実情を集大成したものであり,その文献的価値はかなり高いと言ってよい。本書は,財務省現役職員としての著者の体験と知見に基づいており,また,本書の相当部分はフランス語による第一次資料に基づく労作であることから,フランス経済の最新事情を知るうえで,貴重な学術文献であるとともに,「辞書」的な性格も持ち合わせたフランス経済・税制の総合的な解説書としても高く評価できる。

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