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友原 章典 稿
移転価格課税における事前確認制度の非効率性について

(National Tax Journal 第57巻4号 平成16年12月刊)


 国際的な関係会社間取引についての課税問題である移転価格課税については、その課税基準である「正常取引価格」を巡って見解の違いも多いところから、会社と当局との間において取引価格の決定方式を協議して定め、この方式に準拠して取引が行われる限り当局はこれを認めるという「事前確認制度」を日米その他の国において採用しているが、本論文は、このような制度により国家単位で行われる硬直的な価格決定は、共通の経営資源の下に一つの統一体として行われる経済活動にとって、非効率性をもたらす結果となっていると論じたものである。

 先ず序章において、過去30年、多国籍企業の移転価格問題について各国政府は種々の対策を講じて来たが、最も注目すべきものとして事前確認制度(BAPA)があるとし、この制度により二重課税の回避等は避けられるものの、多国籍企業内の生産決定に歪みをもたらし、その結果、非効率性による損失がもたらされるとしている。この非効率性は課税ベースや税率の違いに応じた調整が阻害されることより生じ、国毎に別々の企業体であるように課税されることは、「多国籍企業」という大河が要所要所で堰き止められ、水がスムーズに流れない様なことになるとし、その結果、課税所得は一つの統一事業としての課税の場合に比して著しく過小なものになるとする。その一つの事例として、原価加算法(コストプラス法)による場合、利益(マークアップ)率が大きくなるほど非効率性が高まるとし、これがゼロまたは二国間の税率差がゼロの場合に非効率性はなくなるとして、このことは反面から言えば、国家の枠を超えた超国家的租税制度にすれば企業利益も税収も増加させることが可能であるということであり、OECDでの電子商取引課税の構築にも有用な示唆を与えるものであると論じている。このことをつぎの「理論」の部で、多国籍企業の税引後利益の関数分析により検証し、生産量は母国の税率の減少関数であり、受入国の税率の増加関数であり(定理1)、二国間の事前確認制度の下における非効率性はゼロのマークアップ率、もしくは二国間で同一税率を用いることによって解消する(定理2)との結論を出している。最後の「結論と今後の展望」において、「企業の課税標準(税引前利益)は、多国籍企業が一つの統合体として課税される場合に比べ、著しく過小なものになっている。」ので、超国家的国際課税制度により税収増を図る可能性がある、としている。

  移転価格課税についてのこれまでの多くの論文は、制度の存在を前提としてのもので、特に事前確認制度については、そのメリットが論じられてきたが、本論文は一つの組織体である多国籍企業に国家単位に課税することからの問題、特に、その事前確認制度のもたらす非効率性を指摘した初めての論文で、極めて意義深い理論が展開されているものであると評価される。

論 文(PDF)・・・・・・503KB

(注) 友原氏が、National Tax Journal 第57巻4号に掲載した論文に基づいて、日本語の論文として作成しなおしたものです。

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