公益財団法人租税資料館


トップページ>>租税資料館賞>>第15回入賞作品>>「個人の金融所得課税のあり方について」
戻る 次へ

青山 骼。 稿
個人の金融所得課税のあり方について

  ―金融資産滅失損の控除に関する一考察―
(修士論文 筑波大学大学院院生)


 本論文は、社債のデフォルト損、預金のペイオフ損、保険会社破綻の保険金削減損など、いわゆる金融資産滅失損の控除についての詳細な検討を通じて、「金融所得課税の一体化」の議論を踏まえながら個人の金融資産課税のあり方を考察したものである。

 本論文では、まず、金融資産滅失損の現行所得税法における解釈、とりわけ所得税法51条の資産損失の必要経費算入規定、所得税法72条の雑損控除規定とのかかわりについての議論を検討した結果、所得税の「損失」は51条の規定のもののみ「必要経費」とされるとする制限説と、51条に規定されていない事業用資産の損失も当然必要経費に含まれると解する非制限説のいずれのアプローチを取っても現行法の解釈上は損失控除が困難であることが明らかにされている。さらに、その理由として、わが国の所得税においては、第一次的な所得に対して所得税が課された後の所得の使途は、基本的にすべて「消費」であって、そこでの「損失」は課税所得の減算要因としては考慮されないという考え方が依然として強いことが挙げられている。

 これに対して、本論文では、主に租税理論的アプローチから反論を試み、金融資産を「貯蓄(消費の可能性)」的なものと「消費」的なものに区分し、前者の要件を満たす金融資産の所得については「金融所得」として合算し、その滅失損を金融所得内部で控除し、一定年度損失の繰越を認めるとともに、後者における滅失損についても異常性を示すものについては雑損控除制度を拡大すべきであるという立法論が展開されている。

 本論文は、現行所得税法規定の綿密な解釈および投資活動に関する丹念な検討を踏まえて、金融所得の創設と滅失損控除制度の創設という具体的な提言、さらにはこのような立法論的提案にあたってどのような課題があるかについての検討にまで及んでいる。金融資産滅失損については、中里実教授等による先行研究があるものの、本論文は新しい視点から研究を深化させており、租税資料館奨励賞にふさわしい労作と評価することができる。


論 文(PDF)・・・・・・3.78MB


戻る 次へ




Copyright (c) SOZEISHIRYOKAN. All Rights Reserved.