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土屋 紀子 稿
「葬式費用に関する問題点」 ―相続税を中心として―
(修士論文 国士舘大学大学院院生)


 本論文は葬式費用について相続税法上の債務控除の対象として認められる範囲を綿密に検討し、あわせて社葬費用について法人税法上、損金として認められる要件の検討を行った修士論文である。

 まず第一章において、我が国における葬儀の在り方について考察し、もともと葬儀は神式的、民族的な「穢れの清め」であったのが、江戸時代の鎖国に伴う政策と言える檀家制度により仏教的葬儀が定着したとして、仏式を主として葬儀の内容を述べ、最近における葬儀屋、石材屋などのビジネス成長などを述べ、時代によって変遷する葬儀の問題として、ペット葬祭料課税事件判決(名古屋地裁 平成17年3月24日判決)についての考察を行っている。本判決はペットの葬祭を業として行う事が法人税法上の「収益事業」に該当するかが争われた事案に関するものであるが、課税を是とする判決についての賛否の批評を検討し、公益法人の行う事業は国家と同程度の公益性をもつものでないこと、ペット葬祭はもともと民間業者が行ってきたもので、完全に競合的であることにより、判決に賛意を表し、葬儀費用についても「葬式というサービスの対価」として理解すべきとする。しかし、葬式費用に関する税法以外の法令の規定などにもその内容を規定するものはないため、例えば初七日法要の費用などが含まれるか否か等、その範囲や誰の負債として控除すべきか等の問題提起を行っている。

 第二章では葬式費用の範囲について検討し、当該費用が既に慣習化している費用であれば、控除の対象とすべきであるとの原則を述べ、葬式当日、葬儀終了後にした会食について、法会の費用として葬儀費用に含まれることを認めなかった裁決(平成10年6月12日)については反対の意見を述べ、香典返戻費用は葬式費用に含まれないとする裁決(平成9年2月13日)には賛意を表し、その他の関連事案の裁決および関連事項の検討を行っている。

 第三章では葬儀費用の控除対象者の問題について、まずその負担者に関する民法の諸説、判例を検討し、相続税に関しては実際の負担者を控除の対象とすべきであるとの原則から相続人ではない者や制限納税義務者であっても、葬式費用負担者とみなすべきであるとし、さらに最近の法改正により課税財産や納税義務者の範囲が国際的に改正された事もあり、細かい検討を行って、例えば海外居住者で制限納税義務者で国内財産のみが課税範囲とされる者は葬式費用の控除が出来ないということについて相応の負担した費用の控除は認められるべきであるとの見解を述べている。

 第四章では、社葬費用の法人税法上扱いを、基本通達9−7−19を中心として検討しており、「社会通念上相当な場合」と「通常要する費用」の内容を具体的に分析し、香典について遺族の収入とする通達(9−7−19)の批判を行い、また社葬についての判決(昭和50年10月16日)等の検討を行い、時代と共に変化していく実体に即応した課税がなされるべきことを結びとして述べている。

  本論文は、葬式費用という地味なテーマであるが、課税問題の前提となる私法関係の研究を含め、親密な研究がなされており、税務について言えば、例えば国外居住者の問題など最近の税制改正に伴う新しい問題も検討されており、自分の意見もきちんと述べられており、それなりに真摯に取り組んだ論文と評価できる。

論 文(PDF)・・・・・・6.64MB


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