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松沼 弘泰 稿 (新潟大学大学院 院生)
「ストック・オプションに係る所得税法上の取り扱いの検討」
 ―所得の年度帰属の問題を中心として―
(修士論文 新潟大学大学院院生)


 近年、米国親会社から日本法人の役員、従業員に付与される権利行使益の所得区分(一時所得か給与所得か)をめぐって100余件の訴訟が提起され、裁判所の判断も分かれていたが、平成17年1月25日の最高裁判決によって、権利行使時に給与所得とする旨が判示され決着を見た。

 この最高裁判決は譲渡制限のあるストック・オプションを対象にしたものであるが、01年の商法改正によって新株予約権制度が導入され、これに伴い、証券取引法上、新株予約権証券は市場での取引が行われることを前提とする有価証券となった。その結果、譲渡制限のない新株予約権が発行され、被付与者が発行会社から払込価格一円もしくは無償で取得し、これを他に譲渡した場合には、ストック・オプションの権利行使益は譲渡所得に転化し、権利行使益を給与所得とする課税体系が崩壊するのではないかという疑問が一部の論者から提起されていた。

 本稿は、その様な事態を回避すべきとする問題意識をもって、代表的なストック・オプションの裁判例を分析し、譲渡制限のない新株予約権証券のうち市場性のあるものについては管理支配基準によって付与時に所得に計上すべきであるとするのがこの論文の主たる論点である。

 本論文では、まず、ストック・オプション制度をその定義と商法及び税法とに分けて概観する(第1章)。次いで平成17年1月の最高裁判決とそこに至るまでの代表的な裁判について、所得計上の時期をストック・オプションの付与時、権利行使の条件成就時、権利行使時に分けて検討した後(第2章)、権利確定主義によって所得の帰属年度を決定することが適当でない場合に管理支配基準が適用された事例を検討し(第3章)、第4章で、譲渡制限の付されていない新株予約権につては、予約権証券に市場性がある場合には、管理支配基準によって権利付与段階において所得に計上し、市場性がない場合および譲渡制限の付されている新株予約権については、権利確定主義によって権利行使段階に所得に計上すべきであるとし、加えて管理支配基準の適用は法律関係を不安定にする恐れがあることから、立法化により基準を明確にすることが望ましいとする(第4章)。

 これらの所論は所得税法36条2項の射程内で当然に解されるとする有力な意見もあり、わざわざ管理支配基準を持ち出すことが適切だったのかどうかには疑問が残るが、大変よく勉強したことが伺われ、構成もしっかりした論文であり、租税資料館奨励賞の授賞に値するものである。


論 文(PDF)・・・・・・2.47MB


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