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藤 貴子 稿
「所得税課税ベースの縮小と税収への影響」

―昭和40年代―
(九州大学「経済論究」123号 平成17年11月刊)


 本稿は、昭和40年代を所得税減税の時代としてとらえ、石弘光氏が先行研究(「租税政策の効果」東洋経済新報社 昭和54年)で用いた統計データの積上げによって分析を行う方法に多くの部分を依拠しつつ、昭和40年、昭和45年、昭和50年、さらには平成15年の各年について、課税ベースの理論値(最大所得ベースと呼ぶ)と現実所得(最大所得から逆算した推計値)との比較やそれぞれの所得に基づく税収額の比較を行い、この間に所得税の課税ベースが大幅に縮小されてきたことを数量的に検証し、その要因を分析して今後の所得税制のあるべき姿を示唆しようとするものである。

 まず、所得税法及び租税特別措置法が規定する所得控除(給与所得控除や専従者控除の経費控除を含む)及び課税方法上の特例措置(利子・配当の非課税や長期譲渡等の1/2課税)無かりし場合の所得を最大限の所得ベースとして推計する。次に、これらから上記の諸控除及び特例措置による除外項目を控除したものを現実の課税所得とした上で、最大所得に基づく税収と現実所得に基づく税収を計算し、減収額と減収の要因を数量的に分析する。

 具体的には、国税統計資料に基づき、最大所得と現実所得の理論値を求め、課税ベースとそれに基づく税収を比較するが、一例をあげると、昭和40年の最大所得は15.1兆円、現実所得は5.5兆円、最大所得の2/3が税制上の非課税措置や諸控除によって課税対象から除外されていた。また、所得税の税収額は最大所得によれば3兆円(負担率20%)、現実所得によれば8,500億円(負担率15.4%)であった。

 昭和45年と50年についても同様な推計を行った結果、現実税収の負担率は、40年と同様、15%台を維持したが、平成15年では、11.8%まで低下した。なお、平成15年の最大所得は282兆円、これに基づく所得税収41.6兆円(負担率14.8%)、また、現実所得は122兆円、これに基づく所得税収は14兆円(負担率11.8%)であり、とくに近年、負担率の低下が顕著であったことを明らかにする。

 筆者は、これらの分析に基づき、財源調達機能の回復に寄与する観点から、給与所得控除をはじめとする諸控除の見直しと土地建物等譲渡所得についての所得税本則の半額課税の復活を提案する。

 この論文の特色は、給与所得控除と専従者控除が必要経費としての性質を超えて拡充されてきたことに注目したことにあるが、それらが所得税の課税ベース及び税収に及ぼした影響を昭和40年から最近までの長いスパンに広げて分析した優れた論文である。


論 文(PDF)・・・・・・1.14MB


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