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上羽 孝昌 稿
「消費税法における「益税」の発生要因の解明」

―公益法人の取扱いについて―
(修士論文 兵庫県立大学大学院院生)


 本論文の目的は、公益法人の消費税に関連する「益税」問題に焦点をあて、その課題を浮き彫りにするとともに、仕入税額控除の制度について営利法人との取扱いの相違により発生する不都合や歪みを鮮明にし、その解消の政策提言を行うことにある。

 本論文は、全4章から構成されている。まず、第1章では、公益法人とは何かを明確にし、公益法人が消費税の課税対象者に該当することを確認するとともに、一般に議論されてきた「益税」問題とは別に、本論文で取り上げる「益税」問題の意義が論じられている。

 次に、第2章では、営利法人と公益法人に共通する課税売上割合の問題を、1)非課税売上の算定式に関わる問題と、2)「課税売上割合95%以上」が適用される企業に「益税」が発生する問題に分けて検討している。特に、後者2)の問題については、中小企業のみならず、大企業にまでも適用されていることから、かなりの「益税」が発生していることを指摘するとともに、「課税売上割合95%以上」の規定を全廃するのが望ましいとしている。

 続いて、第3章では、公益法人特有の「特定収入」に関連する問題を、1)特定収入割合の算定式に関わる問題と、2)「特定収入割合5%以下」が適用される公益法人に「益税」が発生する問題に分けて検討している。特に、後者2)の問題については、「特定収入割合5%以下」の規定が適用される公益法人に多額の「益税」が発生していることを指摘するとともに、「課税売上割合95%以上」の規定と同様に、当該規定を速やかに全廃すべきであるとしている。

 そして、第4章では、1)課税売上割合と特定収入に関連する事項で補助金が交付される場合の一般的な問題と、2)特定収入(補助金)の使途特定に関する問題が検討されている。前者1)の問題については、補助金が消費税込みで交付される場合は「益税」が発生し、消費税抜きで交付される場合は「損税」が発生する問題が論じられている。また、後者2)の問題については、恣意性が介入する余地があること、明文の規定がないことが問題点として指摘されている。

 最後に、本論文では、「課税売上割合95%以上」の規定のような簡素性で適用されている概算制度については、「益税」の生じない課税の仕組みに変革する必要があると結論づけている。

 本論文は、消費税法における「益税」問題について、公益法人のケースに焦点をあてたユニークな意欲作である。本論文が研究対象とした公益法人に対する消費税の問題は、難解で複雑な問題であり、特に、公益法人の「益税」問題は先行研究が極めて乏しい領域でもあるが、本論文は、明快な論旨の展開によって、公益法人に対する消費税問題の特殊性を闡明に描き出すことに成功している。


論 文(PDF)・・・・・・2.58MB


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