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小崎 貴之 稿
「課税制度の本源的機能の回復・強化」

―税制改革へのアプローチ―
(修士論文 広島大学大学院院生)


 本論文は、現在のわが国の危機的財政状況と税制改正の必要性を示すとともに、税制改正の前提として税制の基本的機能の回復の必要性を論じ、所得税と消費税を中心にその改革の効果を計数的に検証したものである。

 まず、わが国の財政現状について歳出入構造、債務残高、社会保障や国民負担の現状などを具体的計数により整理し、少子高齢化による硬直化のため、その抜本的改革が緊急課題であるとし、その税制改革の在り方の検討として、租税原則について公平の原則、中立、活力の原則、簡素の原則の観点から検討し、直接税、間接税の比較等がなされ、租税法律主義について租税正義の観点から論じられている。そして、所得税と消費税の仕組みと問題点の検討をした後、数式による増税と財政縮小の必要性の説明が行われ、供給型シミュレーションモデルによって、現状のままでは財政は破綻すること、所得税や消費税の増税だけでは大幅増税で国民に重税感を与え、また、財政縮小だけによることも実行可能性は低く、結局、増税と財政縮小のミックスによることが必要であると分析している。

 次に、安定的経済に与える影響をモデル算式により所得税と消費税との対比で検討し、消費税体系は所得税体系よりも経済の撹乱効果を与える税体系であるとしている。

 以上の検討のあと、税制改正の効果をジニ係数によって比較し、所得税の場合、現行制度では0.2874のジニ係数は所得控除の整備をすることにより0.2766に改善されるが、消費税の場合、現行税率で0.3011であり、税率が8%となれば0.3035と悪化し、20%となれば0.3137となると分析している(このため消費税の税率引き上げは10%が限度である、とも提言している。)。

 最後に、法人税と相続税の問題に触れ、これらの税への依存を増やすことには慎重な意見を述べ、また、納税者番号制と電子申告制の整備も不可欠であるとしている。

 このように、本論文は税制改正の必要性を論理的、実証的に論じており、その構成も論理的、体系的であり、高く評価できる。また、本論文では、統計数値を駆使して分かりやすく説明し、シミュレーションによって税制改革の提案を具体的に検証するなど、その論旨の展開は明快かつ重厚であり、その結論も説得的なものとして評価できる。


論 文(PDF)・・・・・・4.54MB


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