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小暮 美緒 稿
「外国大使館日本人職員の所得課税を巡る諸問題」

―国税通則法の適用関係を中心として―
(修士論文 帝京大学大学院院生)


 本論文は、納税者側は国税当局も認めている慣行であるとして、相当数の米国大使館職員が給与の一部のみを申告していたことにつき、「偽りその他不正の行為」により一部の税額を免れたとして更正・決定の7年の除斥期間(国税通則法70条5項)を適用できるか、また、「正当な理由」ありとして過少申告加算税の非課税(国税通則法65条5項)を適用できるかについて争われた事件を取上げ、刑事処罰との対比において行政制裁の特色を明らかにしようとするものである。

 この事件は、第一審の納税者勝訴の後、東京高裁判決(平成16・11・30)では、除斥期間の適用及び過少申告加算税の非課税の不適用が判示され、国税当局の勝訴となったが、筆者は、7年の除斥期間と過少申告加算税の賦課を行政制裁としてとらえ、刑事罰の加罰性に関する検討の手法を参考にして、客観的要件(過少申告は単純な誤記による軽微なものか、それ以外か)、主観的条件(過失か故意か、法の不知か、誤った解釈か等)及び違法性阻却理由(信義則の適用等)に分けて詳細に検討する。

 その結果、除斥期間の規定の適用については、本件では、個人の給与明細書を改ざんするような積極的な納税者の行為は見られないが、給与明細書の一部を除外して申告するという、消極的とでもいうべき納税者の行為においても、故意もしくは軽微でない過失が認められ、また、違法性阻却理由もなく、国税通則法70条5項にいう「偽りその他不正の行為」に該当するという結論に達する。一方、各種税法の罰則規定にも「偽りその他不正の行為」という同一の文言があるが、これらは刑事罰が適用される罰則規定であるので「逋脱の意図」が必要とされている。これは、刑事処罰においては、国税通則法70条5項の行政制裁と比べて、その適用要件がより厳格なものとされていることによるものであると筆者はいう。

 次に、「正当な理由」がある場合の過少申告加算税の非課税の規定の適用についても、「正当な理由」の存否について上記の三条件について詳細な検討を行い、一審原告がその申告の前提としていた慣行について、「国税当局が容認していた慣行と呼べるものではない」として信義則の適用を否定した二審の判示を支持している。

 筆者は、以上のような分析の結果について、「刑事罰の加罰性の際の手法を参考にして検討を加えた結果、行政制裁についてもより明確に説明できることが明らかになった」としている。これは、刑法総則の適用を受ける罰則である刑事制裁と比べて、行政制裁である諸規定の適用には、それ程厳格な条件を付ける必要がないことを言おうとしているように思われる。この点について、もっと分かりやすく説明して欲しかったが、全体として、論旨の展開にあたって詳細かつ緻密な議論を展開したレベルの高い論文である。


論 文(PDF)・・・・・・3.84MB


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