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斉木 秀憲 稿
「租税条約の適用・解釈についての一考察」

(修士論文 筑波大学大学院院生)


 近年、匿名組合契約などの租税条約の適用・解釈を利用して源泉地国での課税を逃れると共に、居住地でも課税を逃れている事件が生じている。そこで、本稿は、このような租税条約の濫用に対応する租税条約の解釈・適用の研究を具体的な判決を通じて試みているものである。

 まず、租税条約の軽減税率等の適用については、締結国の居住者がその所得の受益者であることが要件であるとされるが、その受益者の意義については、二重課税の排除及び逋脱と租税回避の防止を含む条約の趣旨、目的に照らして解釈すべきとしている。この受益者の概念は、1977年のOECDモデル租税条約で追加された。日本においては、日米租税条約や日英租税条約等を除くと、受益者について具体的には盛り込まれていない。

 それでは、条約の改定を待たなければ「受益者」の要件を適用できないのであろうか。

 筆者は、受益者要件は、所得税法の経済的帰属による実質所得者課税を意味したものと解すべきであり、条約上定義されていなくても、文脈上、明らかであればそのように解釈をし、租税条約を濫用している取引に対して、条約の特典の適用を否認する根拠となり得るとする。

 具体的には、匿名組合契約には、投資所得を目的とする典型匿名組合契約と、業務者との共同事業としての性格の強い非典型匿名組合契約等があり、それらに基づく利益の分配の性質は、国内法上、雑所得または事業所得等と考えられる。

 租税条約への解釈・適用においては、利子所得説または事業所得説等があるが、筆者は、配当を除くすべての信用に係る債権から生ずる所得は、利子所得に該当するとされていることから、利子所得に該当するとみるべきである。そのように解すると、わが国は匿名組合分配所得の源泉地国として、条約適用の当該所得として課税されることになるとする。

 具体的な判決においては、当該契約は匿名組合契約であり、恒久的施設を通じて事業が行われたとは認められないとして、日蘭租税条約により、いずれの国においても課税できない状態であつたとして、課税庁の主張は認められなかった。筆者の見解によれば、租税条約の濫用に他ならないから、租税条約の特典を享受できない旨主張することも可能であった、としている。

 本稿は、以上のような租税条約上の解釈・適用上の問題の研究に際し、前提として、租税条約の解釈・適用の一般的な検討に関して、租税条約の実施特例法や、OECDモデル条約コンメンタール等を含む租税条約の解釈のあり方について詳細、かつ、精緻な分析を行っていることも、付言すべきであり、本テーマの研究の精緻さ、適切さとあいまって、優れた論文として評価すべきものと思われる。


論 文(PDF)・・・・・・2.49MB


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