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牧 忠司 稿
「会計帳簿の法的性格」

―計算書類の信頼性と推計課税の一考察―
(修士論文 国士舘大学大学院院生)


 改正前商法33条は、会計帳簿には一定の事項につき整然かつ明瞭に記載することを求めていたが、この規定をもってしては申告書作成時に一括して記帳する弊害を是正できなかった。そこで、平成16年成立の会社法432条では、新たに、株式会社は「適時に正確な」会計帳簿を作成しなければならないとする規定を設けた。個人に対しては、商法に同種の規定がかけられている。これが適時性及び正確性の記帳要件と呼ばれるものであって、会計情報の信頼性に対する世の中の関心の高まりを反映したものとして注目された。

 しかし、会計情報の信頼性を高めるためには、記帳要件、会計参与、内部統制等の法制上の整備のみでは不十分であって、会計を作成する側の意識の改革も不可欠である。

 本論文は、顧問先企業に対する毎月の巡回監査の件数日本一の実績を有する会計事務所に勤務する筆者が、会計情報の信頼性を高めるための制度と実務の双方についての方策を網羅的に述べたものであり、取り上げられた項目は、会計帳簿のIT化、会計参与制度、書面添付制度、巡回監査制度、内部統制と日本版SOX法、公益通報者保護法案、内部通報制度の必要性等、多岐にわたっている。

 このうち、興味深い説明を幾つか紹介しておく。

 まず、会計参与制度について即効薬ではなく、時間をかけて緩やかに効いてくる漢方薬であり、会計情報の信頼性の向上に速効性があるのは巡回監査、書面添付及び電子帳簿保存法であるとしている。具体的には、巡回監査報告書と呼ぶ書類に実施した項目をチェックし、月次巡回監査を実施した証しとして必ず経理担当者もしくは経理責任者の自署押印を残し、さらには、毎月、帳簿を締め切った日付が第三者機関の計算センターからデータ処理実績証明書が交付され、これを申告書に添付して課税当局に提出することを行っている。

 また、平成10年に成立した電子帳簿保存法の適用要件の一つとして、電磁的記録の訂正加除履歴の確保があるが、これは、例えば、既に入力した会計データを訂正・削除した場合にはその訂正削除履歴が自動的に確保されるようなシステムであり、また、通常の期間よりも入力が遅れた場合には、その事実が確認できることが求められており、これらは「適時な記帳」を証明することにもつながる。

 本論文で、このほかに会計帳簿の法律的な範囲、推計課税の問題等を扱った部分には、論旨未整理のところもあるが、論文の主要部分では、新会社法のもとで会計情報の信頼性を高めるための法律上の諸制度並びに会計情報の信頼性を高めるための職業会計人の諸活動を網羅的に論じており、その着眼を評価し授賞対象とした。


論 文(PDF)・・・・・・4.70MB


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