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望月 文夫 著
「日米移転価格税制の制度と適用」

 −無形資産取引を中心に−
(財団法人 大蔵財務協会 平成19年5月刊)


 本書は、移転価格税制の母国である米国における制度の展開を紹介し、無形資産取引を焦点とする最近における改正や運用の問題などを述べた第1部と、日本において重視される残余利益分割法を検討した第2部とから成っている。

 まず第1章では、移転価格課税問題は国際取引企業の利益に対する国家間の課税所得配分の問題であるとし、その考え方として独立企業原則と定式分配の二があるとして、第1次大戦中の法人に対する累進課税に遠因がある移転価格税制の誕生と「税の公平(tax parity)」の確保目的を目的とした規則86条の成立を説明し、当峙の判例、学説が紹介されている。そして関連企業間取引の課税について、この独立事業原則による課税の考え方と共に、外形基準による定式配分方式の考えが底流としてあることも主張され、第2章において地方税におけるユニタリ課税の流れが検討され、この考えが連邦税レベルでも論議されたが結局、独立企業原則による歳人手続き63-10が示されたこと、そしてその中にいわゆる「基本三法」の原型があったことを第3章で述べている。68年財務省規則の成立を述べた第4章では、基本三法の制定については当時盛んに研究されていた管理会計会計学の影響が強かったことを述べ、その規則の内容の説明が行われている。第5章では、この規則が原則としている独立企業原則は実務的には困難で、その見直しが必要との認識が示され、86年法改正と自書の公開に至った経緯が述べられている。この法改正に伴う新規則制定の過程が第6章で述べられ、取引価格ではなくその結果得られる利益に着目して課税するCPMや利益分割法が取り入れられる経過が示されている。あと第7章以降は、この新規則の適用を巡っての諸問題(第7章で、利益幅の問題、第8章で行政庁の施策、第9章で定式分配方式の検討、第10章で、その後の進展)を検討し、最後に今後の展望として、EU内でも見られる定式配分法への関心に係わらず、独立企業原則方式は変わることないであろうとし、さらにOECDの主張する取引単位営業利益法は米国のCPMに近づいていくであろうと述べている。日本の移転価格税制の問題を検討した第2部では、まず我が国の移転価格税制の概要を述べ、関連する判例の検討を行い、残余利益分割法が問題である無形資産についても効果的であるとし、各国の理解がまだ十分とは言えないので、その理解について今後、各国への働きかけが必要と論じている。

 移転価格税制の問題について、その生まれた米国での展開を最近に至るまで綿密に紹介し、判例の流れや影響のあった経済理論などの外、実務上、重要な問題である事前確認やペナルティなどについても詳しく述べられ、また日本の重視する利益分割法も、判例の検討や事例による詳しい説明がなされ、移転価格問題について最も充実した著書と認めても良いのではないか、とも言える。しかし、移転価格税制に関して最も大切なことは、「対応調整」という事であると考えられており、国内の州間取引については保障されるこの対応調整の保障がない国際取引に、第二次大戦後積極的に適用されるに至っていることに基本的問題があるという事、さらに現在の転価格税制の問題は米国のラフなCPMの規準ではなく、よりきめ細かい規準の適用をこれから国際的協力によりルール作りをして行こうとしている日本を含むOECDの情況があるという理解もあるという事、さらに第2部での利益分割法重視も国際的な評価、乃至位地付けにもっと考慮を要するのではないかという事など、著者の更なる検討が望まれる点はあると考えられるが、現在、最も関心事とされている移転価格問題について極めて時機をえた高著と評される。


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