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小島 俊朗 稿
「相続税法における時価の概念とその経済学的考察」

(税大ジャーナル7号 平成20年4月)


 本論文は、相続税法における時価の概念をより明確に捉えるため、経済学的アプローチ(需要・供給分析)に基づいて、市場メカニズムにより客観的交換価値がどのように成立するのかを検討し、さらには、具体的な算定方法として、原価方式、比較方式、収益方式を取り上げ、市場の状況に応じて3つの方式を併用すべきと提案している。

 本論文は、まず、財産評価基本通達における時価、「それぞれの財産の現況に応じ、不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額」の意義を客観的交換価値として捉え、経済学でいう市場での均衡価格と同義であることに着目し、さまざまな市場の状況に応じて、価格がどのように決定されるのかを、需要・供給分析により検討している。

 その結果、市場が完全競争市場や独占的競争の状況にある場合には、売買実例を比準することにより客観的交換価値を類推できるが、寡占状態にある場合などでは、売買実例の比準は必ずしも客観的交換価値を類推するのに有効とはいえないとしている。

 そこで、市場性の欠如が著しい財産については、比較方式のみでは限界があることから、原価方式、収益方式も併用すべきであるとして、これらの方式についても取り上げ、原価方式、収益方式による時価は必ずしも客観的交換価値ではないこと、原価方式の適用は再調達できるものに限られること、収益方式の適用は収益物件に限られ、将来の予測に基づくものであることから客観性に問題があることなど、留意すべき点が指摘されている。

 以上の検討の結果、取引事例が十分にある財産の評価は比較方式によることになるが、取引事例が十分ではなく取引当事者が原価方式または収益方式に適合する値決めを行うと通常考えられるような財産については、原価方式または収益方式の併用も検討すべきであると結論づけている。

 本論文は、経済学的アプローチ(需要・供給分析)に基づいて、相続税法における時価の概念をより明確化しようとしたものである。標題が示すような「経済学的考察」が必ずしも十分になされているとはいえないが、評価通達の画一的な取扱いの問題点を的確に指摘し、説得力ある展開がなされていることから、租税資料館賞に相応しい論文として評価することができよう。


論 文(PDF)・・・・・・408KB


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