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五嶋 陽子 稿
「アメリカの医療費控除の制度分析」

(神奈川大学経済学会(商経論叢43巻1号))


 本論分は、アメリカの連邦個人所得税制における医療費控除の政策意図と政策効果の分析を試みたものである。その控除制医療費支出が納税者の担税力を減退させることを配慮し、医療費控除制度により租税負担の軽減を図ることにより、個人の医療費負担を支援するという政策目的が、医療費控除制度にはあるとの側面から、その効果分析を実証的に行うことが本稿の主題である。

 その内容は、まず医療費控除制度についてアメリカ連邦議会の議会資料を手掛かりとして制度創設時の政策意図を明らかにし、1954年歳入法、1965年社会保障修正法、1986年税制改革法、1990年包括財政調整法の制定という転機を捉えて、後の制度改変でそれがどのように継承され、あるいは変革が加えられてきたのかを考察し、医療費控除の機能分析を行っている。

 この分析を通じて、筆者は医療費控除による実効税率の引下げ効果はかなり限定的であり、その意味では政策効果は制度導入目的からすると小さいということ結論として確認している。

 一方、筆者も、「議会資料から読み取った下院歳入委員会、上院財政委員会、ならびに財務省の意向をより深く正確に解釈するためには、行政府の財政政策との関連、とりわけ労働政策、社会保障政策や医療政策との関わりの中で医療費控除を相対化する必要がある。」と指摘されるように、租税政策の効果分析は複合的要素を考慮する必要がある。考慮要素をいかに選択調整して効果分析の有用性を高められるかが本論文の課題となろう。

 また、筆者は、医療費控除による租税負担の軽減効果が限定的であると結論付けているが、そもそも軽減効果は所得額とその控除額自体の大小により大きく左右されるものであり当然のことといえよう。

 本論文は、アメリカの医療費控除制度の租税政策的効果を実証的数値により測定・分析を試みた意欲的な論文と高く評価できる。租税法の立法論にはこのような実証的研究による分析データは不可欠である。我が国においても医療費の問題は議論を避けて通ることができない状況にある。この種の分析は我が国の医療費控除制度を含む所得税における人的控除制度改革にも有益な示唆を与えるであろう。


論 文(PDF)・・・・・・5.21MB


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