公益財団法人租税資料館


トップページ>>租税資料館賞>>第17回入賞作品>>「配偶者控除についての一考察」
戻る 次へ

北村 美由姫 稿
「配偶者控除についての一考察」

 −人的控除の再構築に向けて−
(文京学院大学大学院 院生)


 本稿は、配偶者控除制度の存在意義を再検討することを目的としている。筆者によれば、現在の配偶者控除制度の存在意義は、(1)「生めよ殖やせよ」政策、(2)「妻の座確保」政策にあると理解する。しかし、かかる制度は、社会情勢の変化に柔軟に対応すべきであることから、現在に至るまでの家族形態の変化について検討している。そして、現代における配偶者控除の存在意義が希薄化していることを証明し、現行制度維持により生じる問題点を指摘する。この社会情勢の変化とは、片稼ぎ夫婦子二人世帯を標準世帯としていた時代から、夫の収入も不安定になり、家計を助けるため、妻もパートに出る、共稼ぎ夫婦が増えてきた。そこには、かつては、扶養、被扶養者という関係から、イコールパートナーシップの関係が持つ夫婦が増えてきて、シングル単位社会というべきものに移行している。

 また、少子化によって兄弟姉妹が減少し、兄弟姉妹に助け合いを期待できなくなり、従来の標準家族の機能が減少していることが認められる。すなわち、従来のように家族が社会のすべての基礎と考える時代は終了し、個人単位の社会への移行が、すでに起こっているという現実を受け止めなければならない、とする。

 そのような状態を前提とすると、配偶者控除には、次のような問題点がある。まず、「妻の座確保」のためという存在意義が希薄化してくる。また、少しでも多くの生活費を得るために働かざるをえない低所得階層は103万円の制限を超えて配偶者控除の適用を受けることが制限され、配偶者控除は所得再配分の機能を果たせず、高所得者階層を優遇する結果になっていること、女性の社会進出が妨げられていること、などの問題があることである。

 そこで、今後の人的控除の在り方として、配偶者控除、扶養控除を廃止し(統計によると、高所得階層の方が扶養控除の適用割合が高いことを示している。)、扶養控除に代わる代替案(児童手当)で対応し、基礎控除に集約させるとする。また、この基礎控除も、扶養家族間全員になっていること、かつ、控除しきれなかった基礎控除額を家族の他の構成員に移転適用することを提案している。

 本稿は、多くの統計資料や図表から、配偶者控除及び扶養控除が社会の変化の対応しておらず、所得再配分の機能をはたせず、むしろ、人的控除の二重控除を生じていると説得力のある論証を行っている。そこで、上記のような代替案を提示しているが、大胆な案であるが、妥当なものである。一部の国において夫婦間での移転適用を認めていることなど実施されていることからすれば、今後日本においても、検討問題とすべきであろう。

 個々のライフスタイルの選択に中立である税制を確立するために、現在の家族意識に適した人的控除制度の構築を目指した意欲あふれた論文であり、論旨の展開も説得力のあるものであり、評価すべきものである。


論 文(PDF)・・・・・・1.28MB


戻る 次へ




Copyright (c) SOZEISHIRYOKAN. All Rights Reserved.