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古谷 敦 稿
「租税手続法による租税回避防止策に関する一考察」

 ―タックス・シェルターに対する現行租税法の効果及び問題点の
   再確認と新たな対抗策の提言―
(名古屋経済大学大学院 院生)


 租税回避行為に対する規制の問題は、経済の国際化、複雑化および納税者の節税意識の高度化に伴って、重要性を増している問題であるが、本論文はこの租税回避行為について、米国の立法例を参考にして情報提供や資料保存等、租税手続きの強化による規制を提案しているものである。まず「序章」において、論文の概要を述べ、第1章でわが国におけるタックスシェルターに対する対応策の現状を検討し、著者は租税回避行為について、税法の解釈、適用によって対処できないかという点については、公平の原則にもとるという問題はあるものの、明文の規定がない限り否認は出来ないという立場を採り、実質主義や私法上の法律構成による否認には否定的見解を述べ、また税法の明文規定による規制については、個別規定による規制には限界があり、一般的否認規定についても外国に立法例の検討も行って否定的評価をしている。また手続法による規制については、現行法上設けられている青色申告、推計課税、質問検査権、有限責任事業組合計算書等の制度にも限界があると検証している。第2章は主に米国におけるタックスシェルターに関する制度等を検討しており、租税裁判所において設けられた基準が租税手続規則に規定されるようになったこと、IRS内では乱用的なものとそうでないものとの区分を行っていること、その租税回避策による区分などを検討して、否認の対象となる乱用的シェルターについての基準を具体的に公表していることが述べられている。第3章では、この米国のシェルターに対する開示、資料保存制度の内容およびその強化の流れを検討し、我が国の制度が不十分であることが指摘され、英国、カナダの制度から我が国に規制制度を設ける場合の参考としている。最後の第4章で、我が国にも租税手続規定でタックスシェルター規制策を導入することを提案しており、租税専門家等に対して登録、開示、資料保存を義務付けする制度の導入を提案して、厳罰ペナルティではなく、挙証責任の強化等によるコンプライアンスの向上を図ることによる租税回避の抑制効果を期待することとしている。

 以上のように本論文は租税回避行為の規制問題について、税法の個別的または一般的な否認規定の整備によって対処するのには限界があるという前提で、米国にならって専門家に対する特別の手続規定を設けることにより抑制効果を実現することを提案しているものであるが、米国でタックスシェルター対策の制度が整備されたのは、大幅な減税効果をもたらす減価償却制度(ACRS)に切り替えた1982年のレーガンの税制改革が、いわゆるタックスプロモーターなどにより節税目的に乱用されたことの対策として80年代の半ばからであるが、我が国の情況とは必ずしも同様ではなく、一般的な租税回避行為規制とは別のタックスシェルター規制が現段階の我が国にどれだけ必要性があるのか、更には租税回避行為規制とタックスシェルター対策の問題とが同じと見なしてよいのかなど疑問を感じる面もあるものの、資料の綿密な検討、具体的な提案など、評価すべき点が多い修士論文として評価することが認められる。


論 文(PDF)・・・・・・717KB


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