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村上 裕樹 稿
「確定決算基準の今日的課題」

(早稲田大学大学院 院生)


 本論文の目的は、わが国の制度会計における「トライアングル体制」(法人税法、会社法、金融商品取引法の密接な相互関係)の崩壊を踏まえ、確定決算基準の現状における問題点と今後のあり方について検討することにある。

 本論文は、全5章(序章を含む)から構成されている。まず、序章では、本論文の問題意識と叙上の研究目的が示されている。次に、第1章では、確定決算基準の意義と制度の沿革が考察され、これらを踏まえて、わが国の確定決算基準と諸外国(特に、ドイツとアメリカ)の制度が比較検討されている。特に、確定決算基準の実質的意義について、確定決算において採用した会計処理が適正、かつ、法人税法上も許容されるものであれば、当該計算を所得計算の上で変更してはならず、申告調整は許されないことを意味するとしている。次に、第2章では、確定決算基準の論拠と機能が検討されている。本論文では、確定決算基準の論拠を、課税所得の計算構造(商事財務諸表と税務財務諸表をリンクさせた「結合財務諸表説」)に求め、確定決算基準の機能については、財務諸表制度の統一化をあげ、その利点として、「便宜性」、「課税の安定性」、「真実性」等をあげている。さらに、第3章では、確定決算基準の個別問題が検討されている。具体的には、(1)「損金経理要件と逆基準性の問題」および「新減価償却制度が損金経理要件に与える問題」、(2)「企業側の経営政策上の問題」、(3)「国際競争」、「中小企業」、「粉飾決算」および「確定決算基準が採用されない場合の問題」などが検討されている。特に、「逆基準性の問題」については、法人税法上の計算規定が商事財務諸表を歪める可能性があるとする問題に対して、商事財務諸表は法人税法上の計算規定に拘る必要はないとして、否定的な論旨を展開している。最後に、第4章では、確定決算基準について指摘されている問題の多くは、確定決算基準の本来の問題ではなく、国家的財政政策や企業の経営政策の観点からの確定決算基準に対する非難であるとし、例えば、「逆基準性の問題」についても、損金経理要件を緩和すればその問題は少ないとしている。その結果、確定決算基準の本来の問題は、トライアングル体制の崩壊にあると結論づけている。

 本論文の目的は、わが国の確定決算基準がわが国制度会計において有益なものであり、確定決算基準に対して指摘されている問題の多くが本質的な問題ではないことを論証しようとするものである。この点で、本論文の問題意識は妥当なものと評価できる。また、本論文は、確定決算基準に関するわが国の文献を広く渉猟した努力作であり、その論調にはやや一本調子の面があるものの、その論旨と結論は説得的であり、租税資料館奨励賞に該当する優れた論文して評価できる。


論 文(PDF)・・・・・・679KB


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