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石 弘光 著
「現代税制改革史」

―終戦からバブル崩壊まで―
(株式会社 東洋経済新報社 平成20年1月刊)


 本書は、「終戦からバブル崩壊まで」の戦後60有余年にわたる税制改革の実態について分析を行っているものである。その際、単に税制改革を時系列順に説明しただけではなく、その背後にある租税の政策的側面、また理論的な構造にも分析をおこなってあり、このことは注目される。

 内容としては、第1部「戦後税制の成立過程」において、「戦争による混乱」から始まり、「シャウプ使節団の来日」へと続き、「勧告による所得税・法人税」等から「シャウプ勧告の実施状況」までが含まれている。その中には、シャウプ博士との対話なども含まれている。

 第2部は、「高度成長期における税制改革」の表題の下に、1950年代前半からの政府主導の成長政策による高度成長期の始まりから、石油ショックによりその終焉に至るまでのサクセス・ストーリーについて、シャウプ税制の修正、成長政策の一環として採用された租税特別措置の発展、見直し、税制調査会の設置(従来から、税制審議会等の名称で内閣又は大蔵省に設置されてあった)、さらに、直間比率の見直しの機運としての間接税の見直し(特に物品税の課税範囲の拡大等)等について資料をあげて説明している。

 第3部では、財政再建に向けての税制改革について述べている。日本経済は、高度成長の終焉とともに、安定成長へと移行しており、財政赤字累増が始まり、同時に経済のグローバル化に対応すべき税制について述べている。すなわち、成長の鈍化するにつれて税収不足が深刻化し、新型間接税の構想が浮上し、消費税、利子課税の実現、日本の税制改革に深くかかわった世界の税制改革のながれ、レーガン税制改革の教訓、日本経済のグローバル化のための税制の国際的な側面等について理論的あるいは実証的に整理、検討している。

 第4部では、バブル崩壊後の税制改革の表題の下に、バブル及びその崩壊後の経済動向を詳細に紹介し、この時期に実施された税制改革の流れが述べられている。すなわち、バブルの生起・崩壊及び政府の対応、景気浮揚のための減税措置、と財政健全化との調和策、地価下落の中で土地税制の見直し、地価税の実施と凍結、土地譲渡益課税の負担軽減等、景気好転を受け、「あるべき税制」としての本格的な税制改革、そして、第W部を閉じるに当たり、近い将来の税制改革の方向、財政再建への再挑戦、増税時代の到来、金融所得課税の一体化と納税者番号制度、公益法人改革とその課税の在り方等について言及している。

 本書は、著者自体の税制調査会における長年の経験を中心として、税制の前提たる経済情勢の発生事由の検討、分析から、それらに現実になされた税制対応、あるいは実施されなかった政策等を詳細に説明している。本書は、豊富な資料を整理・分析し、「歴史・政策・理論」の3側面から、我が国戦後税制改革の内容を政策論、課税理論から分析、評価を試みた、ライフワーク的著作である、といえる。


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