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井上 隆 稿
「中小企業・非公開会社において逆基準性が果たす機能と確定決算基準の継続に関する研究」


 本論文の目的は、「間接型逆基準性」(税法上の規定によらず、会計基準において逆進性を認めている方式)が、国内・国外の会計基準の二元化問題と、国内における企業規模に基づく公正処理基準の二元化問題に充分対応可能であること、およびそのアプローチが果たす機能を明確にすること、並びに法人税法が採用する確定決算基準を継続することが、特に中小企業・非公開会社にあっては、実務上不可欠であるということを明確にすることである。

 筆者は、会計の国際化(国際会計基準(IAS)・国際財務報告基準(IFRS)に基づく新会計基準の導入の動き)により、わが国の制度会計も大きく変革されたが、それは不特定多数の投資家を対象に、国際的な事業展開を図る大企業・公開企業を対象とするものであり、中小企業・非公開会社にあっては、これらの会計制度の導入は実務上必ずしも有用とはされないものであり、結果として、企業規模に基づく会計基準の二元化をもたらすこととなったとする。さらに、これにより、わが国の確定決算主義が、国際会計基準への収斂の阻害要因となるとの論拠の一つは無くなったという。

 また、ドイツ、イギリスとの比較研究も行った上で、わが国の中小企業・非公開会社においては、企業利益から決算調整によって課税所得を算出する際に逆基準性は不可欠であり、これを内包する確定決算主義は、人的・時間的・経済的コストが最少で済むことからも、中小企業・非公開会社にとって今後も継続していく必要のある実務上の規定であると論ずる。

 本論文は、わが国の制度会計における「公正処理基準」と「逆基準性」について考察し、さらに法人税法第22条の制定経緯や租税判例からの考察(6ケース)も行っている。

 会計の国際化を受けた諸外国の中小企業会計制度の対応についても取り上げ、国際比較を行うなど、網羅的に丁寧な検討を行っている。引用文献、参考文献も多く、中小企業・非公開会社の会計における「確定決算基準」の有用性について税務行政に携わる実務家の立場から説得力のある説明を展開している。

 結論部分で、筆者が高く評価するわが国の「間接型逆基準性」が、例えばドイツなりイギリスのとった手法と比較して何故にすぐれていると判断したのかが明確でなく、そのあたりの検証がもっとあってもよかったのではないかと思われるが、全体として、意欲的に取り組まれた論文として評価できるものである。


論 文(PDF)・・・・・・861KB


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