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日野 雅彦 稿
「所得区分の在り方」

 ―不動産所得を中心として―
(税務大学校論叢58号 平成20年6月)


 本論文は所得税法上の所得区分の問題のうち、特に「不動産所得」に焦点をあて、その課税のあり方につき論述したものである。

 著者は不動産所得課税制度の沿革から見て、現行の総合所得税のもとでは、不動産所得区分の存立基盤は資産合算制度であり、同制度が廃止された現在、不動産所得という所得区分は存続させる必要があるのかという問題意識から出発する。そして不動産所得には、事業たる不動産所得と業務たる不動産所得があり、それが事業所得と雑所得に対応するものであり、不動産所得であれば、事業であれ、業務であれ損益通算が認められるのに対し、雑所得については損益通算を認めないことの適否を検討する。結論として、著者によれば、雑所得に係る支出、業務たる不動産所得に係る支出のいずれもその内容は家事関連費的なものであり、担税力の減殺要素にはならず、雑所得の損失に損益計算を認めない根拠は業務たる不動産所得の損失にもあてはまるとしている。したがって、不動産所得と事業、雑所得は区別の根拠がなくなり、統合されるべきであり、それにより不動産所得と損益通算を組み合わせた租税回避行為に対する制限規定を不要とする効果が期待できるとしている。また、青色申告については、雑所得に認められていない現状とのバランスから、業務たる不動産所得については不適用(統合されれば当然であるが)とすべきとの提言も行っている。

 本論文では、不動産所得の定義、計算構造等からはじめて、その沿革、問題点へと様々な角度から、しかも丁寧な分析を行ったうえで、今後の不動産所得の課税の在り方についての提言がなされている。このように順序立てられた論旨の展開は本論文の内容をより説得力のあるものとしており、構成のしっかりとした論文と評価することができる。また、不動産所得等の所得区分のあり方は政府税制調査会等で検討の俎上に挙げられている問題であり今後の改正論議の対象となるものと思われること、さらには、不動産所得が租税回避スキームの道具として利用されている事態の是正が喫緊の課題となりつつあることに鑑みれば、本論文のテーマ、内容は時宜を得たものと言うことができ、そうした観点からも高く評価することができよう。


論叢本文(税務大学校のホームページへリンク)(PDF)・・・・・・534KB


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