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岡田 好未 稿
「我が国におけるLLPの損益分配割合に関する一考察」

 ―LLP契約書に定めた損益分配割合が税務上認められるかについて―
(新潟大学大学院 院生)


 本論文の副題としては、「LLP契約書に定めた損益分配割合が税務上認められるかについて」というタイトルが付されている。本論文で筆者は、日本版LLPの創設経緯や課税方法を整理し、課税上の問題点を明らかにした上で、LLPで生じた損益を分配する際の損益分配割合が経済的合理性を有するかどうかについての判断基準を検討しようとする。具体的には、第1章でわが国のLLPの創設の経緯、特徴、設立方法、活用状況に応じて論じた後、第2章では個人組合員と法人組合員に分けて日本版LLPの課税条の取扱いを概括的に検討、さらに、第3章で日本版LLPの課税上の問題点を出資比率や組合員の地位の譲渡、出資資産の差し押さえ等の問題に応じて概観する。第4章では、米国のパートナーシップ課税の概要を経済効果テスト、実質性テストの2段階テストの具体的内容と裁判例(Castle Harbour事件)を紹介する。第5章では、LLP契約書に定めた損益分配割合が経済的合理性を有するかどうかについての判断基準を策定するかどうかをめぐる先行研究を概観し、出資比率と人的資源に応じた合理的な損益分配方法として、出資・分割貢献法の導入を提言すると共に、濫用防止規定の導入を検討する。具体的には、損益分配の割合を出資比率による貢献と、人的資源の貢献(時間、資格、特許、技術、アイデア、営業能力、交渉能力、管理能力)に応じた評価基準とすることを提言し、合理的な理由があれば弾力的に変わることを示唆する。また、米国における濫用防止規定や個別的否認規定の導入を提言する先行研究に触れながら、わが国の場合は、将来的に一般的租税回避否認規定となるような濫用防止規定が必要であるとする。

 本論文は、日本型LLPの特徴と問題点を指摘すると共に、米国パートナーシップ課税を参考としながら、わが国の場合に、損益分配割合が経済的合理性をもつために有用な判断基準を探ろうとする。高橋教授の論稿などの先行研究に多くを依っているとしても、出来るだけ客観的に問題点を分析し、わが国の問題解決への処方箋を見つけ出そうとする筆者の姿勢には好感が持てた。全体的に文章も読みやすく、筆者の書かんとする意図を明確に伝えることができている。その他、内容のまとまり具合、さらには、問題の所在を正確に認識した上で、自ら具体的な問題に対する対応策を示そうとしている点、個々の問題に対する自らの考え方や見解をできるだけ打ち出そうとする姿勢など、多くの点で十分に評価に値する論文である。ただ、文中の注記で引用されている参考資料のほとんどが法令やインターネットからの引用であり、言及されている米国判決も、1件のみしか挙がっていない点は、若干気になるところである。今回の奨励賞受賞を契機として、さらに十分な資料検証などを行い、より完成した論文をめざして努力を続けることを期待したい。


論 文(PDF)・・・・・・480KB


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