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加藤 城啓 稿
「税制非適格ストック・オプションの権利行使利益の所得区分に対する一考察」

―二重利得法の適用可能性を中心として―
(新潟大学大学院 院生)


 本論文は、ストック・オプションの権利行使益は一つの所得区分で対応できるものではなく、権利行使益には複数の性質をもつ所得が混在していることに着目すべきであるとする問題意識の下で、権利行使益について所得の性質に応じた所得区分を提案すること及び二重利得法の適用可能性とその具体的な適用方法を検討することを目的としている。

 筆者は、ストック・オプションを税制適格と税制非適格、更に税制非適格ストック・オプションを、条件付きと条件なしとに分けて整理し、制限なしの場合には権利行使益部分が譲渡所得に転換され税負担が減少する弊害が生じる恐れがあると指摘する。

 その上で、この所得転換が生じるのは、所得の性質が混在する権利行使益を特定の所得区分に分類したことに原因があると捉えて、裁判や学説の研究を行うなかで、権利行使益を一つの所得区分に割り当てることが困難であるとの考えに至り、二重利得法の適用を検討したものである。

 検討の結果、(1)所得性質の変化が不明確であり、(2)二重利得法を適用したとしても納税者にとって必ずしも有利になるわけではないこと、(3)所得税が予定していない損失が生じて課税執行及び公平性の観点から問題が生じる可能性があることから、従来通りどれか一つの所得種類に区分することが妥当であるとの結論に至ったものである。

 筆者は、権利行使益は勤労性所得と解するべきとの意見であり、被付与者と付与者の関係及び付与の原因となった事実に応じて、給与所得、退職所得、事業所得、雑所得となるとの考えを示している。

 ストック・オプションの権利行使益の所得区分をめぐっては、平成17年1月25日の最高裁判決により給与所得とする旨の判断が出たことにより一応の結論が出たとの認識が一般的である。

 しかし、筆者は権利行使益に複数の所得性質が混在していることが問題を引き起こしているとの認識のもとに、権利行使益の譲渡所得該当性、キャピタル・ゲインの性質に着目して所得区分の考察を行っていくなかで、二重利得法適用の可否という流れに至ったようである。

 本稿は、検討している裁判例、学説も多岐にわたり、課税時点、所得区分、金額の測定等、ストック・オプションの権利行使益に関して考えられる論点について全てを網羅したものと言える。


論 文(PDF)・・・・・・617KB


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